火星の春

もっとも寒い時期ですが、いかがお過ごしですか。ときに暖かい日も
混じって、そういうときは春が早く来い、とつぶやきたくなります。
星空もいつのまにか春を感じることができる季節です。春の星座の
しし座が昇って来ています。1月25日ごろ、夜の7時半頃ですと、東の
空は図1のように、しし座の頭がのぞいています。地平線近くは星は
暗く見えるのでまだ見にくいとおもいます。注意深く御覧ください。

しかし、それよりもっと目立つものがあります。真東のちょっと高
い位置に赤みを帯びた明るい星のあることに気ずくことでしょう。
火星です。1等星よりもずっと明るいマイナス1等星の明るさです。
火星はギリシャ語ではアレスで戦いの神です。赤い色は闘争心をそ
そるといいますから、火星の赤い色がそういう意味づけを誘ったの
かも知れません。ローマ神ではマルスに対応づけられていて、これ
は英語のマーチ(3月)の名前の由来にもなっています。でも、火星
が見えるのが3月と言うことではありません。

では、火星の今後の動きに注目しましょう。火星を含めて惑星は星
座の中を移動します。火星は12月にはしし座にいましたが、現在
は「かに座」にいます。図2のように、しし座からかに座の方向、
つまり、東から西に移動中です。しかし、3月後半からは、しし座
の方向にすすみます。西から東です。実は去年の9月、10月、
12月は、火星はふたご座、かに座、しし座というふうに移動して
いました。

かなり複雑な動きですね。混乱してきたと思うのでまとめます。
こう覚えてください。基本は西から東への移動です。順行といいま
す。ふたご座、かに座、しし座の方向です。しかし、火星が非常に
明るくみえるころ、一時期、逆行といって、星座二つぶんくらいふだんと
ちがって西にむかって移動しますが、しばらくすると、また、順行
(東向き)にもどります。この逆行が起こっているときは火星が地球
を公転軌道上で追い越すときで、地球と火星の接近のときでもありま
す。だから、いまは火星を望遠鏡で観察するにはいい時期といえます。

図1冬の天の川
(アストロアーツ/ステラーナビゲータを用いて作製)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/113-fig1.jpg
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図2 すばる(散開星団に分類される)(提供 NASA)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/110-fig2.jpg
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図1、と図2のパワーポイントファイル
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/113-fig.ppt