きれいな天体写真はウソ?

星雲などのきれいなカラー写真にうっとりしてしまう方も多いと思います。
星空のカラー写真はとても人気があります。

というわけで、天文台に来て大きな望遠鏡をのぞいて、きれいな星雲をみ
たいなとみんな思います。ところが、実際に望遠鏡で見る星雲や銀河はあ
の写真集で見たようにきれいではありません。理由はただひとつ、望遠鏡
でみた星雲や銀河には色がついていなのです。白黒画像なのです。一方、
星は肉眼で見たときよりも望遠鏡で見たときの方がずっと色がきれいに見
えます。特に、赤っぽい星と青っぽい星の組合せの二重星はひときはきれ
いにみえます。

前回紹介した目の構造が図1に示してあります。光が眼底にある網膜に
達することで光を感じてそれが脳に達すると「見えた」ということになり
ます。その網膜の拡大図が図2です。左から来た光は、神経細胞の層(G)を
通過し、神経伝達に関係する細胞が詰まった層(B)も通過し、光を感じる
細胞がある層(P)まで達します。ここで光の刺激が発生します。さて、光
を感じる細胞には桿体と錐体の二種類があります。桿体は非常に感度が
よいのですが色を感じることが出来ない細胞です。一方、錐体は感度は
劣るのですが色を感じることができます。目がなれてくると非常に暗い
ところでもわたしたちはものを見ることができます。これは非常に感度の
いい桿体が働くからです。ヒトがおさるさんだったころ、あるいは、もっ
と下等な動物だったころ、夜に外敵に襲われないために発達した細胞なの
でしょう。

さて、もうお分かりと思います。望遠鏡で暗い天体を見るときは桿体を
使って、白黒モードで見るしかないのです。望遠鏡は光を集める力がある
ことを前回説明しました。なので、星の光は望遠鏡を使うと充分な光量に
なるので色がはっきりします。ということは、もし、直径が何メートルも
ある大望遠鏡をのぞくことができたなら、充分な光量が得られたなら、
星雲も色づいてみえるということです。あのきれいな写真集のようなカラー
の星雲がみえるでしょう。私は残念ながら色づいた星雲を見たことがあり
ません。大きな望遠鏡のある天文台を訪問したらぜひ挑戦してみてくださ
い。

最後に、あのきれいな天体写真の色はではどのようにしてつけたので
しょう。図3の写真はわたしたちの「やまがた天文台」の望遠鏡に高感度の
カメラを取り付けて撮影したものです。このカメラは高感度ですが
白黒で色を感じる能力はありません。桿体とおなじですね。そこで、
カメラの前に、赤、緑、青の光の三原色のフィルターを取り付けて、
それぞれについて合計3枚の写真を撮影します。そしてそれらを合成して
カラー写真に仕上げたのです。



図1 目の構造
(前回と同じ図ですので、分かる程度の小さく縮小してください。)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/119-fig1.pptx
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/119-fig1.jpg
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図2 網膜の構造
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/119-fig2.jpg
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図2 馬頭星雲(やまがた天文台にて撮影)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/119-fig2.jpg
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