春霞
春に季節がめぐって来ると、これまでの鋭い星の光はいつのまにか やわらかくなっています。遠くの山も霞んで見えるのですから地表 付近の大気に細かなチリや水滴がただよっているのでしょう。太陽 の光も星の光も霞みがちです。私の自宅では北斗七星がときに6つ しか見えなくなっていることがあります。北斗七星の内の6つは 2等星で明るいのですが、まんなかの星だけは3等星で少し暗いた め都会の夜空では、特に春は、見にくいことが多くなります(図1)。

星が見にくくなるのは星からの光に対して、背景の空が明るくなった ときですが、ちょっと難しいので、この事情をもう少し詳しく説明し ましょう。

図2をごらんください。太陽や星からの光がAのように直接目に入る のが好いですが、大気の分子やチリによってBのように散らされます。 散乱といいます。この分だけ太陽や星からの光は弱くなるのですが、 それだけでなく、別方向で大気に入った光(C)の一部が散乱されDのコース で目にはいってきます。これは空のある部分からの光ですから、 このような散乱光がたくさんあると空全体がボーっとあかるくなります。 背景からの放射として見えるのですね。さらに人口の光がEのコースで 目に入って来るとこれも背景の光となって見えます。こうして、直接の 光であるAにくらべてDやEの背景光が強いと空全体が明るくて星が見え なくなってしまいます。

昼間は太陽からの直接の光Aが強いのですが、同時に Dの光が強くて 空全体が明るくなっています。しかも、赤い光に比べて青い光が強く 散乱されるため、Dの光は青い光に富んでいます。空が青いのはそんな 理由なのですね。
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図1北斗七星の明るさと背景光 (アストロアーツ製/ステラーナビゲータを使用)
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図2 背景光の作られるしくみ
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