新星からガンマ線


今年3月11日早朝のことです。アマチュア天文家西山浩一さん(福岡県久留米市)と 椛島冨士夫さん(佐賀県みやき町)がはくちょう座のV407という星がいつもより 明るくなっていることを望遠鏡にCCDカメラをつけて撮った写真によって発見し ました。三日前に撮った写真と比べると10倍も明るくなっていたのです。

このコーナのNo.56で「フェルミガンマ線望遠鏡」の打ち上げをお知らせしました。 この望遠鏡はいつも空を監視していて、ガンマ線の光を探しています。 この望遠鏡がはくちょう座V407の急激な増光に気がついたのは13日、そして、16日には 確かにこの星からガンマ線が来ていることが明らかにされました。

図1はフェルミガンマ線望遠鏡の写真で、左が3月9日以前、右が10日以降のもので、 右の写真に新しい星が見えます。

いったい、何が起こったのでしょう。まず、日本のアマチュア天文家が発見したのは 「新星」とよばれる現象です。白色矮星とよばれる地球程のサイズの星と太陽の数百倍 もの半径を持つ巨星とが連星をなしています(図2)。巨星は自らが蒸発するような感じ で、自らを作るガスを回りの空間にまき散らしています。そのガスの一部が白色矮星の 方に落ちて行きます。

白色矮星の表面にはガスが降り積もり、降り積もったガスの底は高密度で高温になり ます(図2の左の白い星の回りの赤い部分)。あまりにも高温高圧になると、「水爆」 と同じ原理の核融合反応がはりまり、大爆発を起こします。降り積もったガスの主 成分は水素であり、反応によって水素からヘリウムが合成されたときに巨大な エネルギーが放出されます。白色矮星の表面で天然に水素爆弾が作られたわけです。

新星爆発でガンマ線が出ることは今回、はじめての発見で、その仕組みはよく 分かっていません。(この結果は、8月13日発行の雑誌サイエンスで発表されました。)

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図1 ガンマ線望遠鏡でみたはくちょう座の新星(NASA提供)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/141-fig1.jpg http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/142-fig1.ppt
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図2 新星の仕組み
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