みなみのうお座の神話


今の季節、日が沈んで7時頃、真南に「秋のひとつぼし」とよばれる星が やけにめだって見えています。一等星がポツンとひとつなのですぐに見つかり ます。図1で、ギラギラ光る木星との位置関係も参考にして見つけてください。 また、11月8日ならちょど月が「秋のひとつぼし」の真上にいます。

さて、西洋ではこの星は「みなみのうお座のフォーマルハウト(意味は魚の口)」 です。今日はみなみのうお座のギリシャ神話を紹介しましょう。

アプロディテは美と愛の女神です。もとはといえばこの神さまは古代オリエント の国々で大地の豊饒をつかさどる神でした。その後、 紀元前2000年ころ東地中海の島づたいにギリシャに伝わりました。 絵画では豊満、優艶に描かれるのが普通です。

ギリシャ神話では、彼女をあがめない者、つまりは恋を知らぬものは、彼女に 呪われて、悲惨な目に会うことになっています。似たパターンの話が一杯あり、 みなみのうお座のお話もそのひとつです。

シリアの女神デルセトはアプロディテと仲が悪く、あるとき、アプロディテに 呪いをかけられて、人間の男性に恋をしてしまいます。しかし、神と人間は もともと恋が成就しない運命にあるものです。結局、デルセトは愛する人を 殺し、自分は海に飛びこみ魚になりました。これを哀れんだゼウスが星座にした のが「みなみのうお座」です。

ちょっと淋しい「秋のひとつぼし」を見て、かなわぬ恋に遭遇したたくさんの 人々が共感したかもしれませんね。

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図1 2010年11月15日午後7時ころの南の空
(アストロアーツ製、ステラナビゲータを用いて作図)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/150-fig1.ppt
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