時間


日常の暮らしの中では、時間は単調に流れていて、無限の昔から無限の 未来に進むように感じられます(図1上段)。 年末が近づくと、無情にも常に一定の方向に進む時間がうらめしく思える こともあります。

しかし、ちょっと注意深い人々は時間の中に循環を見出しました。 夜と昼のくり返しや季節のくり返しがそうですし、 月の満ち欠けもそうです。月が三日月、半月、満月になり、やがてやせ細り、 見えなくなり、ひとつき後、また三日月がやってきます。人が生まれて、 子を生んで、自分はやがて死んでゆくという生命の循環もあります。星の運動も 循環があります。たとえば、木星は黄道十二星座を12年かけて順番に移動して いきます。目の前の自然には、周期こそ違いますがいろいろな循環するもの があります。

この考えが進むと、前世があり来世があり、 生まれ変わるという考えも出てきます。 転生輪廻という思想です。 星占いなどでは、宇宙のさまざまな循環運動(星の動きや惑星の運動)と 人間世界の中にある循環運動が関係していると考えて、未来を占おうとします。

天文学の研究でわかったことは、宇宙誕生と同時に時間は始まり、 そこから一定方向に流れているということです。 その始まりは137億年前であることもわかっています。 地球誕生が46億年前ですから、 これらとくらべると、137億年はけっして長い時間とはいえませんね。 宇宙感覚では、つい最近に時間が生じたと言えます。 この一定方向にながれていく時間をギリシャ時代の言葉をかりてクロノス時間と 呼ぶことがあります。それに対句をなす言葉はカイロス時間で、 循環する時間、あるいは人間感覚の時間を指します。

時間と空間が宇宙誕生と同時に137億年前に生まれたというと、 「じゃ、その前はどうなって いたか」と思ってしまいますが、時間が誕生したのがその時なので、 その前というのは存在せず、その問いは意味をなしません。 でもやっぱり不安と言うことではないのですが、循環する時間から 枝わかれてして一定に進む今の時間が誕生したと言う説もあります(図2)。 これだと、始まりはなんだ、という疑問に答える必要がなくなりますね。 ぐるぐる回っている時間なのでどこが始まりと言うのがありませんので。 私の生は、一方向にながれるクロノス時間のなかのほんの短い時間である ことは間違いありません。

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図1 三つの時間の見方
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図2 コッドの時間ループの理論
(出展:「アインシュタインは朝飯前」R.ウォルフマン著、愛智出版)
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