重力レンズ


宇宙空間には、直径が何十万光年にもおよぶ巨大なレンズが浮かんでいて、 そのレンズを使うと遠くにある星や銀河を拡大して見ることが出来ます。

図1を御覧下さい。わたしたちは虫めがねを使って小さな虫を大きく 拡大して観察できます。同様に、宇宙にある巨大レンズを使うと、 とても遠くにあって小さくて見えないような銀河を拡大して地球から見ることが出来ます。

宇宙の巨大レンズの正体は、暗黒物質の塊です。暗黒物質の大きな塊は強い重力源ですから そこには銀河や星が集まって来ます。なので、この塊は銀河の集団(銀河団) として見えます。逆に言うと、銀河が集まっているところには暗黒物質の塊があるのです。

光は、重力によって曲げられるので、暗黒物質の塊(銀河団)は、 レンズの役割を果たします。これを「重力レンズ」といいます。 重力レンズは私達が普通使っているレンズとは違った屈折性を示すので、 遠くの銀河が拡大されると輪になったような像になります。図2が実例です。 でも計算によってその像の歪みを補正することが出来て、図2の左下の囲みのように ちゃんと銀河の像をつくり出すことができました。

図2で拡大された銀河までの距離は100億光年ほどあるそうです。すると、 100億年昔の銀河の姿を見ていることになります。 100億年昔というと、この宇宙が出来て間もない頃ですから、宇宙が出来た頃の 様子が重力レンズを通して見えることになります。 重力レンズはまるでタイムマシンですね。

一億光年かなたにいる虫をレンズで見れたら、 恐竜時代の虫が見えるのに、などととんでもないことを思ってしまいました。




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図1 重力レンズと虫めがね
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図のパワーポイント
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/202-fig1.ppt

図2 重力レンズ現象を示す銀河団の例(提供NASA)
丸く囲ったリング上にみえるのがゆがんだ像。
それを修正して復元した像が左下の四角の中。
もともとの銀河の位置が中央の傾いた四角の位置になる。
銀河団の名称=RCS2 032727ー123623
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