光の長い旅


今日は月も星も滲んでみえています。薄い雲が空一面をおおっているようです。 こうやって、星から出た光をさえぎるものがあるときらめく星は見えません。

光は「光子」と呼ばれる粒が飛んでいるものだと考えられています。 星の表面から飛び出した光子は、だれからも邪魔されることなく、 長い時間をかけて宇宙空間を旅します。千光年先にある星であれば、 光子は、星を出発してから千年間もだれも邪魔されずまっすぐに宇宙を 旅をして、最後にあなたの目の中に入って旅を終了します。 そのときにあなたは星の光を見ることになります。実際には、光が網膜で 吸収され電気信号に変り脳を刺激します。

光は宇宙空間を旅するうちに電子に遭遇し跳ね飛ばされる可能性があります。 ちょうど図1のようです。もし、1立法センチメートルあたり電子が1個あると だいたい1千万光年くらい進むと跳ね飛ばされることが計算されています。 すると1千万光年よりも遠くにある星からの光は直接目にはいることはなく、 今晩の月や星のように滲んだ姿になって見えます。 一億光年遠い星の光はもう何回も跳ね飛ばされて私達のところへ来ることはないでしょう。

図2には約100億光年かなたの超新星からの光が写っています。 今年の1月に発表されたハッブル宇宙望遠鏡がとらえた画像です。 光子は100億年も邪魔されず 宇宙空間を旅をしてきたのですね。とういうことは邪魔をする電子はもっともっと 希薄であることが分かります。 おかげでそんなにむかしの宇宙が始まって間もないころの 光子もちゃんと地球までやってこれるんですね。

もし、宇宙がもっと濃くて地球の空気くらいの気体で満たされていたら、 雲の中に入ってまるっきり視界がきかなくなった状態と同じになるでしょう。 星もまったく見えません。それはなんと退屈な空でしょう。 宇宙が晴れ上がっていてよかったな、とつくづく思います。






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図1 光子は電子によって散乱される
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http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/204-fig1.jpg

図2 遠くの銀河に現れた超新星の光をハッブル宇宙望遠鏡がとらえた(NASA提供)
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http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/204-fig2.jpg

図のパワーポイント
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/204-fig.ppt