ブラックホールの増光


つい最近、NASAのX線望遠鏡「チャンドラ」からの報告で、急激に 1000倍以上に明るくなった天体が報告されました。場所はうみへび座に あるM83と呼ばれる銀河です(図1)。 新しい星が大量に発生している銀河として有名で、きれいな渦巻の腕が 見えています。 この銀河まではおよそ1500万光年もあります。

さて、その謎の天体は、 図2の下辺中央にピンク色に浮かびあがって見えている天体です。 図2の写真はX線で撮った写真で、明るく写っているところからはX線が出ています。 図2と同じ場所を普通の光(可視光線)の望遠鏡で写したのが図3ですが、 並べてみると、該当する場所には特に目だったものは写っていません。 この天体以外にも銀河の腕に沿ってたくさんの小さなX線星が写っています。 しかし、今回見つかった天体は 太陽よりも100万倍も大きなエネルギーを出していて飛びきり明るいのです。 それで超高光度X線源という名前で分類されています。

さてこの天体の正体ですが、天文学者がいろいろ調べた結果、太陽の重さの40倍 から100倍のブラックホールであることが分かりました。 現在急激に物質を吸い込んでいるようなのです。ブラックホールに物質が吸い込まれる ときは吸い込み口が小さいために、物質がおしあいへしあい、ぶつかりながら吸い込まれる ので高温になります。ブラックホールに吸い込まれる直前の熱いガスからX線が放射されるのです。 断末魔の苦しみの中で、特別明るく輝くのが超高光度X線源というわけです。

ブラックホールは重力が強くて光も吸い込んでしまう天体ですから、光が出て来ません。 ブラックホールは星として見えるはずもなく、 だから、名前もブラックホールなのです。 しかし、物質を吸い込むときに熱い物質が光を出して、 ブラックホールに吸い込まれる直前まで光り続けます。 いったんブラックホールに吸い込まれてしまうとその熱いガスからの光はブラックホール から出てこれないので私達の目に入ることはありません。 ここにこの世との分かれがあるのでした。

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図1 渦巻銀河M83
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図2 急に明るくなったX線で光る天体
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図3 図3と同じ場所の可視光線像
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