星の誕生ラッシュ


地球から銀河系を離れて17万光年先に「大マゼラン雲」があります。 大マゼラン雲は目で見るとちょうど白い雲が夜空にぽっかり浮かんだように見えます。 実はこれは私達の住む銀河系のすぐ近くにある別の銀河です。 大マゼラン銀河と呼ぶのが正しいのかも知れません。

マゼラン雲の中に古くは星と思われ「かじき座30番星」と呼ばれていた天体があります。 今の高性能の望遠鏡で見ると星ではなくて、写真のような差し渡し650光年もある非常に 複雑な天体の姿が浮かびあがって来ます。 スターバースト(爆発的星生成)領域と分類されるものです。

ちょうと今の季節、 里山のあちらこちらで鳥が雛をかえし、どこからとも無く虫たちがわきでて来るように、 この領域では、大きな(重い)星、小さな(軽い)星、様々な星が大量に発生する春の季節を 迎えています。

写真には、数万個の蒼白い星の密集した固まりがいくつか見えると思います。これは一気に たくさんの星が生まれた星団と呼ばれるものです。誕生して千年も経たないような星は 黒い繭のようなかたまりの中に埋もれているので見えません。

重い星が生まれて輝き出すと大量の紫外線を放射して、繭のように回りにまとわりついて いたガスを押しのけます。星の回りは空洞になり、ガスは押しのけられた結果、写真に写っている ベールのように見えます。薄く透き通った布が幾重にも折り畳まれているりょうに 見えませんか。

幾重にも重なった部分は濃いガスになりまた新しい星を作ります。こうして次々に新しい星が 誕生していきます。スターバーストは元気のいい宇宙の一角です。 大きな星の集団の年齢を調べると分かるのですが、この元気は3千万年くらい前から現在まで 続いているようです。


| もくじ に戻る|


図1  大マゼラン雲の「かじき座 30」と呼ばれる領域のハッブル望遠鏡による写真(NASA提供)
画像をクリック(拡大)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/215-fig.jpg