星団の合体


科学は新発見によってどんどん新しい考えを誕生させます。 このコナーで5月(215回)に紹介した「かじき座30」という天体に新しい発見があり、 さっそく新しく誕生した見方を紹介しましょう。 8月16日のNASAの発表です。

かじき座30は、 星がどんどん生まれて、たくさんの星が集団をなしているスターバースト(爆発的星形成)領域です。 できた星の集団は「星団」とよばれます。 巨大な雲の塊からつぎつぎに星が誕生して星団ができるというのがこれまでの簡単な見方です。 ところが、 二つの星団が融合して大きなひとつの星団が形成されていくという別のプロセスが 発見されました。 混じりかけている二つの集団が図1からも見ることができます。

「二つの星の集団が互いの引力で引き合ってひとつになり大きな星の集団を作る」と説明されれば、 なるほどと思ってしまうのですが、実際は単純ではありません。

宇宙ではほとんど摩擦力が無いので力学的なエネルギーは変化することができません。 エネルギー保存の法則ですね。 二つの星団が合体して引き締まったひとつの集団になるとそのような落ち着いた状況は エネルギーが減少しているので、エネルギーが保存したままではそうはいかないのです。 エネルギーをいくらか捨てないとそうした融合にはなりません。

エレナ=サビさんたちのチームがひとつひとつの星の運動のスピードを計測していて、 非常に早く、集団を逃げ出していくものがあることを見つけました。 この彼女たちの発見が理解のきっかけです。

二つの星の集団が融合してひとつの星の集団になるとき、一部の星が凄いスピードで 集団からはじき飛ばされて、集団を離脱します。この星がエネルギーを持ちさって くれるのです。結果っとしてのこりの大多数の星たちはまとまってひとつの大きな集団を 作るというわけです。こんなプロセスがかじき座30で起こっていたのです。

似たようなことが人の集団でも起こりそうなので、自然現象かなってちょっと考えてしまいませんか。


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http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/228-fig1.jpg
図1 ハッブル望遠鏡による最新の「かじき座30」の映像
(NASA提供)