宇宙は平坦


宇宙は「曲がっている」とか「平坦だ」とか聞いたことがあるかもしれません。 これは一体何を言っているのでしょう。

図1を御覧下さい。私が月を見ている絵ですが、月までの距離は月の 直径の約百倍あります。このように距離と大きさが百対1の関係にあるとき、 月の見かけの直径(図のAの部分の角度)が0.5度になります。 百対1ルールとでも呼びましょう。太陽までの距離と太陽の大きさも ほぼ百対1ルールになっていて見掛け上、月と太陽はほとんど同じ大きさに見えます。

五円玉を手に持って腕を伸ばし、五円玉の穴から月をのぞくとします。 すると月が五円玉の穴にすっぽりあてはまります。 五円玉までの距離が50センチくらいあれば、五円玉の穴の直径は5ミリメートルです から百対1のルールで、月と五円玉の穴の大きさは見かけ同じに見えます。

さて、今度は100万光年の彼方にある二つの銀河を考えましょう(図1)。 二つの銀河の見かけの隔たりが0.5度だったとすると、百対1ルールによって、 二つの銀河間の距離は1万光年です。 ところが、 実際の銀河間の距離が8千光年しかなかったり、逆に、1万4千光年もあったりする 可能性があります。

いったいどうなっていればそんな食い違いが起こるのでしょう。

身近な例を示しましょう。図2の様に、北極点から鶴岡市と新庄市を見ると 約0.5度隔たってみえます。百対1ルールが使えそうです。 そこで、北極点から鶴岡や新庄までの距離を調べ、百対1ルールで 鶴岡と新庄間の距離を計算すると49.7キロメートルになります。 しかし、実際は約43キロメートルしかありません。

なんでずれてしまったかと言うと、百対1ルールは平面上に図1のように 描いて計算したルールです。しかし、北極点と鶴岡市や新庄市は丸い地球の 上に乗っています。平面ではなく曲がった面の上にあるためこのようにずれたの です。 つまり、図1の銀河の距離が1万光年からずれるならばそれは宇宙空間が ある丸みを帯びている証拠となります。

このように銀河の位置を研究する時には宇宙空間の曲がりのことを 考えねばなりません。遠くの銀河の位置は過去の位置を見ている (第224回)ということも考えねばならずとても複雑です。 しかし、幸なことにこれまでの研究の結果によると、 私達の宇宙はとても平坦であって、丸みは帯びていないということです。


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原図
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