中秋の名月の旧暦


今年は9月30日が旧暦の8月15日で中秋の名月になります。 「運よく」この日は満月ですので、きれいなお月さまをお楽しみ下さい。

旧暦は、新月(専門用語では朔[さく])の日をついたちとする暦ですので、 15日は満月になるのは当然で「運よく満月です」なんておかしい書き方だな、 とお思いになった方もおいででしょう。しかし、旧暦で15日なのに満月にならない 場合も結構あります。その事情を今日は説明いたします。むかし、日食や月食の 予測に苦労していた理由も垣間見ることができます。

図1の様に月は地球の回りを公転しています。地球からみて、 月と太陽が同じ方向に位置するとき朔といって、 この日をついたちとします。朔から次の朔まで平均29.5日 かかります。その半分の14.75日後に図1の「望」、つまり、満月の位置に月が やってきます。しかしこれは平均の話です。

実際の月の軌道は図2の様になっていて円ではなく楕円です。平均距離(図の aの長さ)は38万4400キロメートルですが、図のように 5.488パーセント 地球の位置がずれています。

図2で「あーいーうーえーあ」の順に月が回っていきますが、 「い」の位置で5パーセントほど地球に近く、「え」の位置で5パーセントほど 地球から遠くなります。速度も変化していて、「あーいーう」 では早く運動します。等速円運動を仮定した場合にくらべて実際の月は ずっと先にいます。ところが、「うーえーあ」の位置では 月のスピードは遅くなります。等速円運動を仮定したときの月の位置よりも だいぶ遅れてしまいます。新月から満月までに要する時間は、 早いときと遅いときでは二日も違います。

最初、太陽の光が図2で右から左へ直線Lに沿ってあたっていたとします。 でも、ひと月すると地球の公転により太陽の光は直線Mに沿っています。 このように太陽の光の射す方向も時々刻々移動し、そのスピードも 地球の公転が真円でないため変わります。これらを全て計算に入れないと 月食や日食の予想はできません。

この記事を書くにあたって私も楕円軌道による時間のずれを積分計算して 確認しましたがコンピュータプログラムに3時間もかかってしまいました。 月の満ち欠けの計算は思った以上にたいへんなことのようです。


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原図
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図1 月の満ち欠けのしくみ
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図2 月の軌道は楕円
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