宇宙天気予報でブラックホールに落下する雲


「宇宙天気予報の時間です。今日は太陽からの風が強く、地球から火星方面に 向かう宇宙船はご注意ください。」なんて、テレビの天気予報の時間にながれるような 時代が来るでしょうか。

すでに宇宙天気予報は実際に始まっているようです。そこで、今日お知らせする 予報は、私たちの住む銀河系の中心にあるブラックホールに宇宙の雲が来年ころ 落下するだろうという予報です。作り話ではなくてこれは科学雑誌ネイチャーに 今年1月に発表された予報です。

私たちの太陽系は銀河系という大きな星とガスの渦の中にあって、その中心 の回りを約2億年の周期で廻っています。銀河系の中心にある天体はブラックホール で、ブラックホール自体は見えないのですが、回りをとりまく高温のガスが 光っていてそれは地球からでも見えます。その光る部分は「いて座A*」 と呼ばれています。夏のとてもいい天気のときに山に登ると図1のような すばらしい天の川がみえます。天の川はまさに銀河系の渦巻く星とガスが見えているのですが、 そのなかでも川が太くなっている、いて座、さそり座、へびつかい座、たて座に 囲まれた方向に銀河系の中心があります。

中心のブラックホールは太陽の重さの400万倍あって、その半径は地球の半径の 2000倍くらいです。そこに向かって地球の重さの4倍くらいの濃いガスの雲が 運動している事がわかりました。2004年には1200km/sの速さで、そして現在は 2350km/sにスピードアップしてブラックホールにまっしぐらに移動しています。 現在はブラックホールの半径の3千倍くらいの距離にあり、このままいくと来年には ブラックホールにぶつかるそうです。最後は、雲は潮汐力という 効果で引きちぎられ分解するでしょうが、一部はブラックホールに 落ちて、吸い込まれる直前にX線で輝くのでないかと思われます。 図2はいて座A*のあたりの現在のX線画像ですが、来年のいつか、中央の明るい 部分が ぱっと二倍くらい明るく輝くのでないか、その光を分析すればブラックホールの回りの空間が どうなっているか分かるのでないかと天文学者は楽しみに待っているところです。


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図1 9月上旬午後7時頃の南の空(Stellariumを用いて作図)
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図2  銀河中心方向のX線写真(提供:NASA)
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