アルマ望遠鏡


アルマ望遠鏡が今年中に完成式典が開かれるそうです。 このコーナーでも今後アルマ望遠鏡の成果をご紹介する事がたびたび出てきそうなので、 今日はこの望遠鏡を紹介いたします。

アルマ望遠鏡は、チリ共和国のアタカマ砂漠の標高5千メートルの高地にあります(図1)。 この望遠鏡は、私たちになじみのある可視光線の望遠鏡ではなく電波望遠鏡でです。 衛星放送のアンテナの巨大版を想像すると良いでしょう。 衛星放送はおよそ12ギガヘルツの周波数ですが、 アルマ望遠鏡は30ギガヘルツからその百倍の振動数の間で宇宙からやってくる電波を とらえます。(電波の波長で言うと、10ミリメートルから0.1ミリメートルで、 ミリ波からサブミリ波と呼ばれます。)

直径12メートルのアンテナ4台と直径7メートルのアンテナ12台から構成される ACA(アタカマコンパクトアレイ)とよばれる部分を日本が担当して建設し、 他の部分はアメリカとヨーロッパのチームが担当する国際共同プロジェクトです。 全体では直径12メートルのアンテナ50台を加えて合計66台のアンテナで構成されています(図2)。 これらを最大18.5キロメートルの広がりを持たせて配置して、一斉に同じ方向にアンテナを向けて観測します。 受信したすべてのアンテナの信号を重ねあわせ干渉させることによって、 直径18.5キロメートルの望遠鏡と同じくらいの高い分解能(こまかいところを見分ける能力:人間で言うと視力) を得る事ができるものです。 もし、1000光年もの彼方に、太陽系と同じようなものができかけていて、 そこでガスや微惑星のようなものが渦巻いていたとしましょう。 このとき、この渦の微細な構造を見分ける事ができるくらいの強力な分解能です。 図3は日本が建設した直径7メートルの望遠鏡群です。

星や惑星ができる前の材料となるガスや塵は極低温ですので可視光線を出す事は有りません。 電波を出すのです。そこで電波望遠鏡での観測が適しています。 また、有機物の分子からの電波が受信可能なので、宇宙のガスや塵の中に生命の起源を見つける可能性もあります。 ミリ波やサブミリ波の電波は大気中の水蒸気や酸素やオゾンによって吸収されるので、人間に取っては厳しい環境では ありますが、酸素も薄く、寒い、乾燥した高地が設置場所として適していたわけです。

このようにして、良い条件の場所に作られた66台の望遠鏡群がいよいよ今年完成するわけです。 では、アルマ望遠鏡による観測成果を楽しみに待つことにいたしましょう。



執筆メモ: 干渉計の分解能は 675GHzで6mas、110GHzで3masくらいある。


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図1 アルマ望遠鏡のあるアタカマ高地(提供:国立天文台)
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http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/248-fig1.jpg
図2 アルマ望遠鏡の全体像(提供:国立天文台)
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図2 直径7メートルの電波望遠鏡群(提供:国立天文台)
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http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/248-fig3.jpg