ヘルクレス座(2)

英雄ヘラクレスの後半生は、ゼウスの正妻ヘラによる迫害につぐ迫害です。 ヘラは化けガニをヘラクレスのもとにさしむけます。 しかし、あっさりカニはヘラクレスに踏みつぶされました。 現在、カニ座になっているのはこの化けガニです。

ヘラクレスはアルゴリス一帯を支配する王エウリュステウスに仕えました。 この間、十二年にわたってヘラクレスは 十二の難行を成し遂げます。 (1)ネメアの不死身の獅子の皮を取ってくること(この獅子がしし座として星座になっています)、 (2)九つの首を持つ水蛇退治(星座としてはうみへび座が対応します)、 (3)アルテミスの聖なる鹿を生け捕りにすること、 (4)エリュマントス山の猪の捕獲、 (5)三千頭を飼い三十年間掃除されなかった家畜小屋の掃除、 (6)ステュムバロス湖畔の鳥の群れの退治、 (7)クレタ島の狂い牛の生け捕り、 (8)人食い馬の捕獲、 (9)アマゾン族の女王の帯の獲得、 (10)西の世界の果てから牛を連れてくること、 (11)日没の国の黄金のリンゴの入手、 (12)冥界の番犬を地上に連れ出すこと。 書き出すだけでどっと疲れてしまいました。 これらの難行を裏で仕掛けているのは、もちろん怒り狂うヘラです。


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図1 英雄ヘラクレス(イラスト:宮弘子)

最後の難行でヘラクレスはデイアネイラを妻とします。 あるとき、渡し人夫のネッソスがデイアネイラに情欲をおこしますが、ネッソスはヘラクレスによって退治されます。 しかし、 デイアネイラは、 ひん死のネッソスから、もしもの時のためにとその血をもらい受けてしまいます。

あるとき、ヘラクレスは戦いに勝って帰るとき、敵の女王を捕虜として連れ帰りますが、 妻デイアネイラはこれを怪しみ、ヘラクレスの着るものにネッソスの血を塗ります。

服を着たヘラクレスにあっという間にネッソスの血の毒気がまわり、肌が焼き付きます。 服を脱ごうとすると皮がくっついて剥がれてきます。 ヘラクレスはもはやこれまでとオイタ山の頂に火葬の薪を積み、火をつけさせます。 デイアネイラは自らの過ちに驚き自害します。

火葬の火が天に昇ると、稲妻が走ったかと思うと雷鳴とともに、 ゼウスがヘラクレスを天上に引き上げました。 やっとヘラの怒りも解け、 ヘラクレスは彼女の娘ヘベを妻として神の列に加えられたそうです。


図1
英雄ヘラクレス(イラスト:宮弘子)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/273-fig1.jpg