有頂天

お盆が終わって、先祖の霊が帰っていくところは宇宙の果てでしょうか。 そこには安らかな悟りの境地があるのでしょうか。


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図1 仏教の有頂天の位置と実際の宇宙の位置の比較

仏教では、私たちの住む世界は「金輪」と呼ばれ、 その中心に須弥山という高い山があると言います(図1)。 須弥山の頂上には最高神のインドラ(帝釈天)がおいでです。 須弥山の中腹あたりを月や太陽が回っています。 金輪の底の部分で水輪に接するところが金輪際(こんりんざい)です。 「金輪際、嘘は申しません」などといいますが、この世の最後まで決して嘘は言わないという意味です。

金輪のもっと上位には神が住む天があります。 欲界、色界、無色界が上に積まれていて、最上位にあるのが有頂天というのだそうです。 そこは、考えやこころもない悟りの境地です。 私たちは、得意の絶頂にあることや、夢中になった気持ちを有頂天といいますが、 仏教に由来する言葉なのでした。 文献を見ると、金輪の大きさや有頂天までの距離が由旬(ゆじゅん)という単位で書いてあります。 1由旬は牛車で一日の行程で約14.4kmです。 文献から有頂天までの距離を現代の距離の単位に換算して計算した方がおいでで、その方によると有頂天までの距離は 4.08光年だそうです。

そこで図1では仏教での宇宙を現代的宇宙のスケールで描き直してみました。 月は金輪に属しますが、現実の太陽は須弥山のさらに上にあることになります。 もっと広がって惑星たちの居る場所があります。 現代天文学では、その外側には氷でできた岩のようなものが多数太陽のまわりを 回っていると考えられていて、オールとの雲と呼んでいます。 その外はほとんど真空の空虚な空間が広がっています。 距離的には、そのなかに有頂天があることになります。 太陽にもっとも近いお隣の星はケンタウルス座のアルファ星です。 そこまでの距離が4.3光年ですのでそれはさらに遠い位置にあります。


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図1 太陽のお隣の星、ケンタウルス座アルファ星系の想像図。 (提供:ESO)

ケンタウルス座のアルファ星は3重星で、呼ぶときには後ろにA、B、Cを付けます。 ケンタウルス座のアルファ星Bには地球サイズの惑星が見つかっています。 そこには生物がすめそうにないことが分かっていますが、他に惑星があるかもしれません。 もし、そこに知的生命がいたらどんな宗教でどんな宇宙を描くのでしょう。 いずれにせよ、 仏教やその背景にあるインドの古代文明で考えていた宇宙より 現実の宇宙はずっとずっと大きいようですね。


references
図1 仏教の有頂天の位置と実際の宇宙の位置の比較
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/278-fig1.jpg
図2 太陽のお隣の星、ケンタウルス座アルファ星系の想像図。 (提供:ESO)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/278-fig2.jpg
パワポ
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/278-fig.pptx