いるか座新星

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図1 いるか座新星(赤丸) 8月11日撮影(左)には写っていないが、22日撮影(右)には写っている。(撮影:熊谷幸三氏)

今まで無かった所に突然星が輝きだすのが新星です。 その新星がいま「いるか座」で見えています。 図1では、星座の入門書にも出てくる「いるか座」と「や座」も示していますので新星の位置が理解できると思います。 発見者は山形市の板垣公一さんで、8月14日のこと。 発見当時は約7等星でした。 しかしその後どんどん明るくなり、15日から現在原稿を書いている22日では 4等星から5等星です。この明るさなら肉眼でも確認可能ですし、 双眼鏡を使えばしっかりとらえることがでるでしょう。

私たちが使っている「こと座」、「はくちょう座」などの星座は5000年も前からあるのですから、 星は普遍のものという印象があるとおもいます。 天文学的な名前が「恒星」ですのでなおさらです。

実際、新星は新しい恒星が生まれたというわけではありません。 もともと地球からは見えないくらい暗い恒星があって、 その恒星が突然明るくなったのです。 新星にはいろいろな種類がありますが、星全体が爆発して元の形を無くしてしまうような強烈なものを 特に超新星と呼んでいます。 一方、星表面でおこる爆発が原因のものを単に新星と呼んでいます。 今回のものはこの新星です。


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図2 新星のメカニズム(NASA提供画像を一部改変)

なぜ突然明るくなったのでしょう。 最初に、暗くて小さな星(白色わい星)がありますが、それがもう一つの別の星と互いに回り合っています(連星)。 小さい方の星は地球と同じくらいのサイズです。しかし、重さは太陽と同じくらいでとても密度の高い星です。 その星に向かって相手の星のガスが渦をまきながら降り積もります(図2)。 雪が降るように星の表面にガスが降り積もり、 小さい星を覆い隠してゆきます。 やがてガスの底はぎゅっと押されて(圧雪状態のイメージで)高圧で高温になります。 ある限度に達するとそのガスは核爆発を起こし、それが星の表面全体に広がります。 こうして、新星として輝き始めます。 核爆発が終わると、ガスは吹き飛んでやがて暗い小さな元の星にもどって行きます。

どのような爆発状態になっているか、全世界で追跡観測が今も行われています。


references
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/279-fig1.jpg
図1 いるか座新星(赤丸) 8月11日撮影(左)には写っていないが、22日撮影(右)には写っている。(撮影:熊谷幸三氏)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/279-fig3.jpg
図2 新星のメカニズム(NASA提供画像を一部改変)
パワポ
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/279-fig.pptx