秋の日はつるべ落とし

黄昏時(たそがれどき)というのは、 「誰そ彼」、つまり、「だれあのひとは」ということで、 日が沈んで、だんだん暗くなり顔もよく見えなくなる時間をさしています。 夕焼けの色もきれいで、一日の仕事も終わり、少し落ち着いた、いい時間かもしれません。 今日を反省してちょっとしょんぼりしている時もあるかもしれません。


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図1 9月4日午後6時40分の西の空(山形市)(Stellariumを用いて作図)

9月上旬ですと日没が6時頃ですので、6時半から40分が黄昏時で、 夜のとばりがおりるまでの ほんの20分くらいがいい時間と言えそうです。 天文学の用語ではこの時間を薄明(はくめい)といいます。 図1には6時40分ころの西の空を表しています。南西方向に宵の明星の金星が明るく輝いています。 そのぐとなりに一等星が見えているでしょう。これは、和名では真珠星、西洋の名ではおとめ座スピカです。 やや左手高い位置に土星が見えると思います。これらの星はすぐに沈んでしまいますので、 時間を見計らってぜひお楽しみください。


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図1 地平線から何度下に太陽があるかで薄明の時間を決めている。江戸時代の暮れ六つは生活に根ざした定義であり、 天文薄明は天体の観測ができる目安をあたえる。

また、昔から「秋の日はつるべ落とし」といって薄明の時間が短くすぐ暗くなるといいます。 本当でしょうか。 薄明の時間は地平線の下、何度のところまで太陽が沈んだかできまります(図2)。 江戸時代の寛政暦のころから暮れ六つとして黄昏時がちゃんと定義されていて、 地平線下、7度21分40秒なのだそうです。 これは、京都における春分・秋分の日の日没から二刻半として定めたものです。 (一刻は一日の百分の一のことです)。

実際、こうして定義された暮れ六つを用いて、 日没から暮れ六つまでの時間を調べてみると、秋分の日のころは30分くらいで短く、 夏至や冬至のころは、40分くらいで長くなります。 なので、本当に秋のころは日没から暗くなるまで早いのです。 ただし、春分のころも同様に早く暗くなるのですがこちらはなにも言わないのは不思議ですね。 夕暮れ時に味わいのあるのはやはり秋だからでしょうか。


references

http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/280-fig1.jpg
図1 9月4日午後6時40分の西の空(山形市)(Stellariumを用いて作図)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/280-fig2.jpg
図2 地平線から何度下に太陽があるかで薄明の時間を決めている。江戸時代の暮れ六つは生活に根ざした定義であり、
天文薄明は天体の観測ができる目安をあたえる。
パワポ
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/280-fig.pptx