宇宙を測る単位
金星の話をこのシリーズの第一回で、おとめ座の話を二回 目でしました。いよいよ宇宙に船出、という気持ちで書き進 めています。

 おとめ座に輝く一等星の「スピカ」も金星も、肉眼で見 る限りおなじ「星」として見えています。実際はこの両者 までの距離はものすごく違うのですがそれは見た目ではわ かりません。星までの距離は星それぞれで違うのですが、 夜空を見上げてもその遠近感というものをまったく感じる ことができません。

 金星や木星、土星など太陽系の惑星までの距離を表すと きは「天文単位」と呼ばれる単位を用います。1天文単位 は太陽と地球の間の距離で、約1億5千万キロメートルで す。太陽をめぐる地球の公転軌道の平均半径が1天文単位 ということになります。土星の軌道半径は約10天文単位 です。海王星では約30天文単位です。

 一方、スピカまでの距離は、光年という単位を使って表 します。1光年は光が一年かかって進む距離です。スピカ までの距離は約260光年になります。

 今日のポイントはこの天文単位という単位と光年という 単位の違いを直感的に理解することです。1光年は光が一 年かかって進む距離です。一方、太陽からでた光は地球に 到達するまで約8分かかります。この1年と8分のひらき はとても大きくて、約6万倍違います。それほど太陽系ス ケールと恒星世界のスケールに開きがあります。

 宇宙を歩くときの歩幅は1光年が適当です!

 一歩が1光年とたとえると、惑星の回っている範囲は 0.1 ミリメートル程度になってしまいます。このサイズのもので 真っ先に私の頭に浮かぶのは、ビールを作ってくれる酵母菌 です。暑い日々がまもなくやってきます。

図の説明文
宇宙を歩くなら一歩は1光年と決めましょう。おとめ座 のスピカまでは260歩です。この縮尺だと土星の軌道半径は 0.1ミリメートルになります。

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