アジアの星物語I

皆さんがご存知の星や星座の物語のほとんどはギリシャ神話で、 日本を含めアジアのお話はほとんどないのでないでしょうか。 七夕やかぐや姫のお話くらいでしょうか。

アジアの各地で古くから伝わる星の物語を収集し出版しようと いう「アジアの星プロジェクト」が2008年にスタートし、 このほど「アジアの星物語」(万葉舎)という本が出版されました。 興味のある方はぜひ手に取ってお読みください。 いままでとは変わった味わいの物語にふれることができます。 そんななかからベトナムに伝わる、月に昇ったクオイのお話を 今日はご紹介します。

心の優しい少年クオイはひょんなことから命の木を手に入れます。 死にそうな重病でもその木の葉を口にするとまたたく間に元気になる、 そんな木です。 命の木にはいつも清い水を与えなければなりません。 汚い水をあげたらたいへんなことがおこります。

心の優しいクオイは、重病の人や死んでしまった人を見ると、 いのちの木の葉を食べさせ、生き返らせてあげ、たくさんの人を助けました。 あるときお金持ちの男がやってきて、娘が重病なので助けて欲しいと頼みました。 クオイは命の木の葉を使って娘を助けました。 男の差し出すお礼をすべてクオイは断るので、家族は相談して、 娘をクオイの嫁にやることにしました。 そして、二人は幸せに暮らしました。

それを妬んだ悪者がクオイの妻を絶対に生き返るらないほどひどいことをして 殺してしまいます。 しかし、クオイはなんとか妻を生き返らせることに成功するのですが、 頭の働きが完全にはもどらず、なんでもすぐに忘れるようになってしまいます。


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図1 アジアの星プロジェクトより

あるとき、 妻は命の木に清い水をあげることを忘れ、汚い水をあげてしまいました。 すると木はブルブルと震え、地面をぬけて天に向かって昇り始めました。 クオイは引きもどそうと根を引っ張りますが、 木はクオイをつれてどんどん昇り、とうとう月に達し、やっと落ち着きました。 こうしてクオイは月に住むこととなりました。 いまでも、月を見ると、命の木とクオイの姿をみることができます。


references
図1 (アジアの星プロジェクトより)これが出版者から指定のクレジットです。
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/309-fig1.jpg



参考: