シラーのキリスト教星図

「聖ヘレナとキリストの十字架」などという星座はおそらく聞いたことがないと思います。 長い歴史の中でいろいろな星座が作られては、忘れられてゆきました。

とはいっても、「はくちょう座」「さそり座」「こと座」などは由緒正しいとても古い 星座で、2世紀ごろプトレマイオスによってリストアップされた48星座の中に入っています。

この48星座以外の星座では、たとえば「かみのけ座」は、 有名な天文学者ティコ・ブラーエ(1546-1601)の星のリストに掲載されています。 「こぎつね座」は、はくちょう座とわし座の間にある地味な星座ですが、 これはヨハネス・ヘヴェリウス(1661-1687)によって新設された星座です。 ヨハン・バイエル(1572-1625)は1603年全天星図『ウラノメトリア』を作って有名になりました。 この時代、プトレマイオスの48星座の間にすき間家具的にいろんな人がいろんな星座をつくりました。 「かみのけ座」と「こぎつね座」はともに現在でも使われています。

そんななか、ユリウス・シラーは1627年にキリスト教星図を刊行しました。 そこでは、プトレマイオスの48星座はいっさい使わず、 全天をキリスト教にちなんだ星座に総入れ替えしてしまいました。 たとえば、星座占いでおなじみの黄道12星座は、 キリストの12人の使徒の名前になっています。

そして図1のような星座もできました。何座かわかりますか。 これは、はくちょう座ですが、 シラーの星図では、冒頭であげた「聖ヘレナとキリストの十字架」となっています。 なかなかすてきな絵ではありますが、シラーの星図にある星座はは使う人は少なく、 今は使われていません。


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図1 シラーの星図より(提供: Linda Hall Library of Science, Engineering & Technology)
上記のクレジット付きで使用許可を得ています。

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図1 シラーの星図より(提供: Linda Hall Library of Science, Engineering & Technology)
上記のクレジット付きで使用許可を得ています。 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/321-fig1.jpg

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