夢の天文台
天文学の心髄はなんといってもたゆまない宇宙の観察です。
そのなかでブラックホールも暗黒物質も発見されました。

天文学の歴史の中で画期的なのは写真だとおもいます。
昔は望遠鏡を目でのぞき込み、紙にスケッチして記録していたのですが、
今は目より感度の良いカメラによって記録を残せます。
写真を保存しておけば、
過去の写真と現在の写真を比べることによって、
明るさの変る星や過去の爆発現象を見つけたりすることができます。

天文学者は興味ある天体を詳しく観測しますが、
目的天体の調査が終わっても、データは保存しておきます。
目的天体と一緒に写真に写ったすぐ隣にある天体のデータが重要な発見を
もたらすこともあるからです。

もっと、話を進めて、全天くまなくバシバシと撮影してそれを保存しておく
という考え方もあります。
その映像はいろいろな目的でいろいろの人に利用されます。

大量の観測データが集まってくるとそれをインターネット上のコンピュータに
ためておいて誰でも見れるようにします。
最近流行の「クラウド(雲)」とよばれるサービスの宇宙版です。
もし、ある天体を見たい時は、
いちいち望遠鏡を動かして観測しなくても、
クラウドにある仮想的な天文台にコンピュータを繋げ、目的の天体の観測データを
取り出せば良いことになります。

そのような天文台はもうすでにいっぱい出来ていて、
たとえば有名なハッブル望遠鏡のデータをみたければ
「ハッブルレガシー」とよばれる天文台にアクセスすれば良いことになります。
図1は、「子持ち銀河」の名前で知られるM51を調べた結果の例です。
インターネットで画像検索するのと同じように見えますが、
プロ仕様なので画像検索と同じではありません。
専門的に観測したのと同じデータが取得できます。
例えば、この銀河で星が誕生している場所を探査するとか、銀河の回転速度を
調べるなど本格的研究ができるデータが取得できるところが夢の天文台の
すごいところです。

昨日、私も研究上で必要になっていたJ0726-2612というパルサーのX線の明るさを
宇宙X線望遠鏡によるデータで確かめました。
図2はその天体が写っているX線の映像です。
「曇っていても」、どんな天気でも、
クラウド(雲)の上の夢の天文台で観測できる時代がやってきました。




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図1 ハッブル望遠鏡のデータを集めた「ハッブルレガシー」からのデータ取得画面 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/377-fig1.jpg
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図2 XMMニュートンXせん望遠鏡によるパルサーJ0726-2612の映像 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/377-fig2.jpg
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376図1 秋の土用の位置がずれていました。お詫び申し上げます。修正済画像。 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/376-fig1.jpg
本文終わり
references パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/377-fig.pptx