背景放射の悩み
満天のきれいな星空を見たいものです。
しかし、人口の光があって、
ぼんやりと夜空が全体光って、肝心の星の光が隠されてしまいます。
全体を覆うぼんやりとした光、「背景光」、が邪魔です。

人口の光が無い、真っ暗なところに行けば背景光は無くなるでしょうか。
宇宙ステーションまで行けば、背景光はなくなるでしょうか。
実はどこに行っても背景光は無くなりません。

図1は私たちが扱っている画像解析のようすですが、
調べたい星の像のまわりになにやらもやもやした光が背景光として見えています。
これを差し引かないと目的天体の光の分析ができないので、
背景光は本当に悩みの種です。

地球のまわり十光年くらいを見渡すと、明るい星はケンタウルス座の二重星二つと
シリウスくらいでしょう。
しかし、範囲を広げると星の数はどんどんと増えていきます。

図2をご覧ください。
比較的近くのAの当たりに明るい星が一つ見えます。
これより二倍くらい遠いBの位置には4つの星が見えます。
このように距離の二乗に比例して見える範囲(図の四角)が大きくなるので星が増えます。
一方で、距離が遠くなると距離の二乗に反比例して星は暗くなります。
この結果こんな計算が成り立ちます。

Aのあたりにある星にくらべてBのあたりにあるの星の明るさは二分の一ですが、星の数は二倍です。
Bのあたりの星の明るさはAにくらべて四分の一ですが、数は四倍です。
Cのあたりにある星の明るさは九分の一ですが、星の数は九倍です。
結果として、
目に入る光はAのあたりの星からの光の量を1とすると、Bのあたりから来る光の総量も1、
Cのあたりから来る総量も1です。
さらに遠くの光を足していくと、1+1+1+1+...と、目に入る光の量はどんどん増えて
光の量は無限になってしまいます。

実際は、光が途中で吸収される、星には寿命がある、宇宙は膨張しているなどいろいろなことがあって
無限に明るい夜空にはなりませんが、
遠くのもほどたくさん見えることは重要です。

このような事情で、背景放射は結構明るいものになってしまうのです。
図1のもやもやしたものはとても遠くにある銀河の光だと思われます。

宇宙は決して暗くなく明るく賑やかだというのが正しい認識のようですね。






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図1 星の写真には背景光が写ります。 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/379-fig1.jpg
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図2 星の数の変化の様子 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/379-fig2.jpg
本文終わり
references パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/379-fig.pptx