爆発的電波放射の反復発見
電波望遠鏡で空を眺めていると、ピカッと空の一点が光ることがあります。
数年前に発見された「早い電波バースト(Fast Radio Burst)」、略してFRBという不思議な現象です。
私たちの住む銀河系の外の遠くの銀河で起こっている現象であると考えられています。
その原因にはいろいろな説があって、
中性子星が合体するといようなどんでもない大事件が起きて、そのときに出るのでないかという人もいます。

その「とんでも系」の原因が好きな人には都合の悪い観測事実が最近発表されました。
一方、
私は電波パルサーの研究をしていますが、それに関連した現象かもしれないという気がして来て楽しくなります。

この謎のFRBという現象は空のあちこちでランダムに起こっていました。
なので、宇宙のあちこちでとんでもない爆発現象が起きているというふうに考えていたのです。
マックスプランク研究所のスピッツラーたちのグループは、
アレシボにある305メートルの電場望遠鏡に特別の受信機(AFLA)を搭載して観測し、
FRB 121102と名付けられたFRBが起こった同じ場所に10回もくり返しFRBが起こることを発見しました。
図2を見ると分かりますが、
最初のスパイクがFRB 121102でその後、900日程おいてFRBがくり返し起きています。
最初に二つ、そして、一時間くらいの間に、7回も起こっていることが図から読み取れます。

気になるのがこの電波バーストがどれほどの規模のものかということです。
私たちがよく知っている電波パルサーであるカニパルサーという天体にもにもジャイアント電波バーストというFRBに似た現象があります。
この強さに較べると、FRBの電波強度は千分の一程です。
ということは非常に小さな現象かというと、そうではありません。
正確な距離は分からないのですが、遠くで起こっている現象であることが分かっているからです。
もし、カニパルサーより千倍遠いところにある遠くの銀河起こっている現象だとしましょう。
千倍遠いと、強度は百万分の一になるので、FRBの強度はカニパルサーのジャイアントパルスの千倍強くないといけません。
実際の距離はもっと大きいかもしれないので、もっと規模の大きい現象かもしれません。
そんな規模の大きい現象がくり返しつぎつぎに起こるのはとても不思議なことです。

さて、困ったな、FRBの正体は何でしょう。今後の研究にご期待ください。



画像をクリック(拡大)

図1 FRBの観測に使われたアレシボの電波望遠鏡(提供:アレシボ観測所) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/407-fig1.jpg
画像をクリック(拡大)

図2 くり返し起こしたバーストの記録(Spitlerら, Nature, 17168の表より作図) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/407-fig2.jpg
本文終わり
references Spitler et al. 2016, Nature 17168, doi:10.1038 パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/407-fig.pptx