蔵王の月うさぎ
10月13日は旧暦9月13日で十三夜のお月見の日です。
今日は、 蔵王山の兎と月の話を紹介しましょう。

ずう~~っと昔、
お猿さんと狐さんと兎さんの3匹が仲良く蔵王の御山で遊んでおりました。
すると、麓の方からぼろぼろの着物を着たお爺さんが、
今にも倒れそうに杖ついて上ってくるのが見えました。

お爺さんの申すことには,
「お猿さんや、狐さんや、兎さんや、わしは喉がカラッカラに渇いてなあ、
どうか水をご馳走して下さらんかなあ」。
兎さんとお猿さんと狐さんは「はいよぉ!」と元気よく言って、
ガラ、ガラ、ガラと沢に下りていって、
大きな蕗の葉っぱに冷たい沢水を汲んでご馳走しました。

「あ~うまいなあ、冷たくて美味しいなあ」とお爺さん。
そして、
「実はわしは昨日から何にも食べ物を食べておらんのよ、
何か食べ物をいただけまいか」。

お猿さんと狐さんと兎さんは「はいよぉ!」と元気よく言って、
駆けだしました。
お猿さんは近くの木に、スル、スル、スルと登っていって、
美味しい木の実を持って来ました。
狐さんはシャッポ、シャッポ,シャッポと沢の水に入って、
美味しい魚を持って来ました。

兎さんはあちこちをピョンピョン、ピョンピョン、ピョンピョンと跳ね回って、
食べ物を探したけれど、
何にも食べるものを見つけることができませんでした。

お爺さんの前でずっと考え込んでいた兎さんは、すっと顔を上げるとこう言いました。
「お猿さん、枯れ枝を集めて下さいな。」
(お猿さんは「はいよ!」と言って枯れ枝を山のように集めてきました)、
「狐さん、この枯れ枝に火をつけて下さいな。」
(狐さんが火をつけると、枯れ枝はボオ~ッと燃え上がりました)、
「気の毒なお爺さん、私はあっちこっち食べ物を探し回ったけれど、
何も見つけることはできませんでした。」
そう言うと、
「気の毒なお爺さん、ですから、せめて、せめて、この私を食べて下さいな」
と燃えさかる火の中にパーッと飛び込みました。

お猿さんと狐さんは、あまりにも哀れで、オイオイと泣いておりました。

気がつくと、お爺さんは光り輝く立派な神様の姿になって立っていました。
神様は燃え盛る火の中に手を差し入れ、
焼け焦げた兎さんを優しくだきかかえると、
なんと不思議なことでしょう、
元の真っ白い兎に生き返ったのでした。

「お前は何と優しい心の持ち主だろう。
わしと一緒に天に戻ろう。」
月の宮殿の前に立って神様はこう言いました。
「おまえは、ここで暮らすがよい。」
それ以来、兎さんは月の宮殿で楽しく暮らすことになりました。

月夜の晩になると,
あの元気な兎さんの姿が月に映し出されるのを見つけた
蔵王の山の動物たちがが「兎さ~ん、兎さ~ん」と手を振る姿を見ることができるんだそうです。

おしまい

(柴田いくよ話から要約)

お願い:10月からやまがた天文台の時間が冬時間になります。
一時間早くなり、スタートが午後6時15分であと、全体が一時間シフト
します。よろしく書き換えお願いします。


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図1 (挿絵:菊地美咲) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/437-fig1.jpg
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図2(挿絵:菊地美咲) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/437-fig2.jpg
本文終わり