ネコの目ふたつ
ネコの目を思わせるふたつの星を紹介しましょう。
図1と図2はどちらも夜空に浮かぶ天体の写真ですが,どちらもネコの目のようでないでしょうか。

私は図1の方がネコの目のような印象を受けるのですが,
図2の中央部分だけをよく見るとこちらもなかなかいい目の形をしています。
図2の方は可視光線で見えて昔から知られているので、こちらに
キャッツアイ(ネコの目)星雲というニックネームがついています。
正式名称はNGC6543です。
図1はX線で見えるのでニックネームは特になくて、RCW103が正式名称です。

どちらもネコの目のようですがかなり違った性質を持つ天体ですので、
その家柄といいますか、正体を紹介しましょう。

まず、RCW103(図1)は約1万光年かなたにあって、目玉に相当する円の直径は14光年もあります。
超新星残骸とよばれるもので、歳とった太陽の10倍よりもっと重い星が爆発して飛び散ったものです。
瞳にあたる中央に光っている星は、マグネターという天体です。
マグネターとは、太陽黒点の磁場よりも1兆倍もの強い磁石を持った星で、
その磁場を光にかえることで光っている不思議な星です。
マグネターの直径は20km程で市町村サイズです。

一方、NGC6543(図2)は約3000光年の距離にある星で、目玉の直径は約1.2光年です。
惑星状星雲と呼ばれるもので、
太陽くらいの星が歳とって膨張しぶよぶよになってひろがって出来た雲のようなものです。
瞳に当たる中央に光っているものは白色矮星という天体になりつつある状態です。
星の芯の部分が余熱で光を出しながら冷えていっている状態と考えれば良いでしょう。
大きさは地球と同じくらいです。

両者の共通点と違う点がわかりましたか。
共通点は、どちらも星が年取った最後の姿ということです。
歳とった星の目ということですね。
この星の一生はどんなだったのでしょう。

人間についても,目の奥底をみると、その人の一生のなかにあったいろいろの過去を目は語っているように見えます。
「君みずや、双眼の色。語らざれば憂いなきに似たり」
という漢詩の一節をおもいだします。







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図1 超新星残骸RCW103 (提供:NASA) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/439-fig1.jpg
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図2 惑星状星雲 NGC6543 (提供:NASA) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/439-fig2.jpg
本文終わり
references パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/439-fig.pptx