長い時間の尺度
時の流れは繰り返すことなく一定の速さで進むように見えます。
一方、時の流れを測るためには繰り返す運動が使われます。

振り子の行ったり来たりの数を数えて振り子時計は時を刻みます。
原子の中の振動を使って一秒は定義されていますし、
1日という単位は地球の自転の周期を使って決めました。
7日間ということは地球が7回自転したことですね。
もっと長い時間を測るには年を使いますが、これは、
地球が太陽の周りをめぐる周期を単位にしています。
7年間というのは地球が太陽の周りを7回巡ったということです。

もっと長い時間を測るのに便利な周期運動はないでしょうか?
その一つが地球の自転の歳差運動です。
図1のように地球の自転軸は公転面から23.4度傾いていて、
いつもほぼ北極星のあたりを向いています。なので、
地球の自転軸の方向(天の北極とよびます)を中心に星空は1日一回
ぐるりと回ります。
地球が公転運動しても、宇宙空間における自転軸の方向は不変であり、
北極星のあたりを指しています。

図1の上の図のように、私たちの生活する時間においてはこの軸は不変と
思っていいのですが、
非常に長い時間でみると図1の下の図のように首振り運動します。
その周期は約26000年です。

図2のように、旧石器時代2万6千年昔には星空は今と同じように
運動していましたが、クロマニオン人が洞窟壁画を描いていた頃は、
ケフェウス座の方向が中心でした、しばらくすると、織姫星が中心と
なって運動します。つまり、織姫星を北極星と呼ぶようになるでしょう。

人類が農耕をはじめ、古代文明が発生した頃は、りゅう座あたりが
中心でした。そして、いま、また、2万6千年を経て、今の北極星の位置に
戻ってきました。

なんとも気の長い話ですが、
人類が進化した道筋を測るにはこの歳差運動周期がちょうといい尺度に
なりそうです。




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図1 地球の自転軸(上)とその歳差運動(1,2,3,4の順に軸が移動しています)。 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/468-fig1.jpg
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図2 星座の中の自転軸の方向の移動 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/468-fig2.jpg
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図3 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/468-fig3.jpg
本文終わり
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