赤い星が減量する
図1のように天空に輝く真っ赤な星を、望遠鏡で見ると、図の右下のように、
宇宙に浮かんだ巨大なシャボン玉が見えてきました。
ポンプ座のUという名前の星です。

ポンプ座などどいう星座の名前は初耳という方も多いと思いますが、
ちゃんと日本からでも見える星座です。
図2のように、春の南の空に、おとめ座とおおいぬ座に挟まれた領域に、
からず座、コップ座、うみへび座などととともに見える星座です。
ポンプ座Uは、
小さな望遠鏡でもとても赤い星としてみえます。
地球から850光年ほどの距離にあります、

表面温度が約2000度で、
星としては非常に低温度です。
炭素から出る光をたくさん含んでいるので炭素星と呼ばれます。

この星は、
星の一生のなかでは末期の状態なのですが、
まるで心臓のように膨らんだり縮んだりを繰り返しています。
振動を繰り返しながら自らの体を作るガスを周りの空間に投げ出して自らは軽くなり、
投げ出されたガスは図1のようなバブルを作ります。

最近、この星を南米チリにあるアルマ望遠鏡が詳しく観測しました。
図3はその結果のひとつです。
炭素を含んだ分子から出る光を捉え、ドップラー効果という現象を利用して、
ガスが星から出て行く速度を求めたり、密度を求めたりすることができます。

研究結果によると、この星は今から2700年前、すごく早いペースで自らの体を作る
ガスを放出して、たった数百年の間に、地球千個分ほどの質量の減量に成功したそうです。
一秒間に千兆トンの質量放出です。
その結果として、この巨大なバブルができました。

今月、もう2キロ減らしたい私の体重ですが、羨ましい限りです。




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図1 ポンプ座U星(提供:アルマ(ESO/NAOJ/NRAO)) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/486-fig1.jpg
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図2 ポンプ座の位置(ステラリウムを用いて作成) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/486-fig2.jpg
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図3 アルマによる画像(提供:アルマ(ESO/NAOJ/NRAO)) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/486-fig3.jpg
本文終わり
パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/486-fig.pptx references will be note-486 This ALMA image reveals much finer structure in the U Antliae shell than has previously been possible. Around 2700 years ago, U Antliae went through a short period of rapid mass loss. During this period of only a few hundred years, the material making up the shell seen in the new ALMA data was ejected at high speed. Examination of this shell in further detail also shows some evidence of thin, wispy clouds known as filamentary substructures. Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/F. Kerschbaum https://www.eso.org/public/news/eso1730/ https://www.eso.org/public/images/eso1730a/