重力波
何もせずじっとしているとか、惰性にまかせて特別なことをしないほうが面倒がなく、
気楽に暮らせると思っている人も多いのでないでしょうか。
そうじゃないことをする人は波風を立てる人ということでときに嫌われ者です。
波風は立ったけれど、結局は物事が改善されたという場合もあるのですが。
これは人間世界の話ですが、物理法則でも同じです。

たとえば電気や磁気をもった物体がじっとしてるか、あるいは、慣性にしたがって等速度で運動していれば
何ごとも起こりません。
しかし、右に左に振動したりすると波が生じます。
これを電磁波と言います。
テレビやラジオ、携帯電話などでは電子を意図的に震わせて波風を立たせ、つまり、
電波を放射して通信に使っています。

質量のあるものは重力の源ですがこれも右に左に周期的にあるいはデタラメにうごくと波が立ちます。
これが重力波です。

電気や磁気の力に比べて重力はとても小さいのでこの波は弱く、たとえば、二つのブラクホールが衝突するというような
派手な現象が起こらないと大きな波にはなりません。
そして繊細な観測装置によってのみ検出可能です。
今年のノーベル物理学賞はこの重力波の検出に成功した3人の物理学者、
レイナー・ワイスさん、バリー・バリッシュさん、キップ・ソーンさんが受賞しました。
図1のようにレーザー光を発射し、それが二つの経路を通って、一緒に戻って検出器に入るようにした装置を使います。
重力波がなければ二つの光は同時に検出器に入るですが、重力波があると、二つの経路の長さが変わるため同時には到着しない
ので重力波が見つかるというわけです。

私の研究は規則正しいパルス電波を出すパルサーという天体です。
すでに、3000個ほどのパルサーが見つかっています。
このうち、規則正しさが抜群なパルサーを数十個見繕って二十四時間体制で地球上でパルスを観察します。
すると、重力波が地球とパルサーの間を通過すると、
パルサーからの電波は重力波の中を通ってくるためパルス受信のタイミングが微妙にずれますから、
これによっても重力波を見つけることができます。
この方法による重力波測定計画が今すすんでいて間もなくこの方法でも重力波が見つけられることでしょう。

今回ノーベル賞を受賞した観測装置も毎年何個もの重力波をこれから見つけるでしょう。
これまで知られていなかった宇宙のいろいろのことがわかってくるのでないかと楽しみです。


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図1 重力波の検出原理 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/488-fig1.jpg
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図2 パルサーによる重力波検出原理(提供:David Champion/NASA/JPL) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/488-fig2.jpg
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図3 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/488-fig3.jpg
本文終わり
パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/488-fig.pptx references will be note-488