クロゴケグモ
天文学者は天体に覚えやすいニックネームをつけるのが好きです。
私の研究しているパルサーという天体についても、図1のような画像が撮れたパルサーには、
ねずみの形に似ているのでマウスという名前がつきました。

変わったところでは、クロゴケグモというのもあります(図2右上)。
この蜘蛛は毒蜘蛛なのですが、交尾のあとメスの蜘蛛がオスの蜘蛛を食べてしまうことから、
自ら後家になることで、この名前がついています。
英語ではブラックウィドウといいます。

では、クロゴケグモというのはどんな天体なのでしょう。

二つの星が互いに手をつないで周りあっている連星というのがあります。
仲のいいご夫婦星とでもいうところでしょうか(図2(1))。
そのうちの質量の大きな奥様の星(Aの星)が先に超新星爆発を起こして、
パルサーになったとします。
パルサーというのは半径が10kmくらいで高速に自転している強い磁石の星です。

しばらくするとその自転速度が鈍ってくるのですが、
相手の旦那様の星(Bの星)が元気付けようと、
Bの星の一部を奥様のAの星の方に降り積もらせてくれます(図2(2))。
互いに公転しながら、降り積もるので公転のエネルギーをもらって、
奥様のAの星の自転がアップします。
これがものすごく、最も早い例だと一秒間に700回近い速さで自転するようになります。
まるでミキサーのモーターのような速さで自転するパルサーになるのです(図2(3))。
これくらい早い回転になると奥様星であるパルサーAからはパルサー風というすごい高速の風が吹き出ます。
するとなんと、その強い風を受けたために旦那様のB星は溶け始め、
やがて全て蒸発して消えてしまいます。
Aの星はもう連星ではなく、寂しい単独の星、後家星になるのです。
そこでAの星をクロゴケグモのメス、Bの星をクロゴケグモのオスに例えるわけです。

星の世界も生き物のように厳しい世界なのですね。




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図1 マウスと呼ばれるパルサー(提供:NASA) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/495-fig1.jpg
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図2 クロゴケグモ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/495-fig2.jpg
本文終わり
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