銀河系の渦巻き構造
台風の渦巻き構造は気象衛星の写真から簡単に見ることができますが(図1左)、
昔は、
風の向きと雲の動きから渦巻き構造に気づくことは難しかったと思います。

図1の右の様に、
私たちの太陽系は銀河系という渦巻く星の集団の中にいることが現在ではわかっています。
太陽系から渦巻きの中心までは、光で行って2万6千もかかる距離にあります。
私たちが夜空で星座として見ている星は、銀河系の図の緑の点線くらいのごく限られた範囲です。
いったいどの様にして銀河系の渦巻きを知ることができるのでしょう。

気象衛星のような位置で写真撮影したければ何万光年も遠くに宇宙船を飛ばさねばならず、
とても人類の力の及ぶところではありません。

銀河系の渦巻きの地図をおぼろげながら描けるようになったのは、
いまから60年くらい前のことです。
水素原子から放射される波長12cmの電波は到達距離が長く銀河中心の向こう側からもやってきます。
また、電波を放射する低温の水素ガスが太陽に対して近づいたり遠ざかったりしていれば、
ドップラー効果と呼ばれる現象が起こって、波長が21cmからわずかにずれるのがわかりました。
適当な回転法則を仮定すると波長のずれから運動速度、そして、水素ガスまでの距離が計算できます。
水素ガスの方向と距離をたくさんしらべると渦巻き構造が浮かび上がってくるのでした。


私が大学1年生のころ、もう、30年以上前ですが、このことが演習問題なっていました。
いま、学生のときの古いノートを引っ張り出してみると、図2のように何やら落書きの多い
図が見つかりました。
天の川に沿っていろろな方向からやってくる水素の21cm電波の強度を測った図です。
この図を解析して、なにやら面倒な計算をすると銀河の腕が描けたのを覚えています。
図3は実際に1958年にオールとやカーといった天文学者によって描き出された銀河系の
渦です。
私が生きているごく短い時間のうちに 図1右のような図が描けるまで進歩したのは
驚くべき速さと言えるでしょう。
さて、これから何がわかって来るのでしょう。






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図1 台風と銀河系の渦(提供:気象庁、NASA) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/503-fig1.jpg
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図2 私が大学生だった頃の演習ノートより http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/503-fig2.jpg
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図3 電波でとらえた銀河系(オールト、カー、ウエスターホート 1958 英国王立天文学会月報より) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/503-fig3.jpg
本文終わり
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