星から出た光はどこへゆく

宇宙空間に浮かぶたくさんの星々を想像してみましょう(図1)。
これらの星々は太陽のよう輝き、光を放っています。
しかし、その光は星から出たあとどうなってしまうので
しょう。太陽から出た光は一部は地球上に到達するでしょう。
ある光は、植物によって吸収され、食物を合成するエネルギー
として使われます。あるいは、地上に落ちて地面を温めてくれ
ます。

太陽から出た大部分の光は、しかし、どこにも到達する
こと無く、宇宙空間の長い旅に出てしまいます。永遠に
走り続けるのでしょうか。いったいどこに行ってしまう
のでしょうか。私達を不思議な気持ちにさせる疑問です
ね。

はるか何万光年も遠くにある星から出た光も、やはり、
どこに到達するかわからない旅にでて、そして、その一部
が地上にいるあなたの目に入ります。すると、あなたは
「ああ何万光年も向うにある星が見えた!」と感じること
でしょう。宇宙空間にはたくさんの星があります。たくさ
んの星から出た光が長い旅の末、わたしたちの目に入り、
結果として、わたしたちはたくさんの星を見ることになります。

ドイツの眼科医のオルバースという人はこんなことを考え
ました。「ひとつの星から出た星の光のほんのごくごく一部しか
私の目に到達しないけれど、宇宙にはたくさんの星があるから
その星の光が目に入ってくれば、夜の星空は昼間のように明るく
輝くのではないだろうか。」星や銀河の光は距離が遠くなればな
るほど距離の二乗に反比例して暗くなります。しかし、ある距離
にある星や銀河の数は距離の二乗に比例して増えてゆくので、
どの距離にある星や銀河も同じくらいの明かるさを作り、すべて
の距離にある星や銀河が作る光を足し合わせた空全体の明るさと
言うのは無限に明るくなってしまいそうです。

しかし、実際の夜空は真っ暗でありこの考えと矛盾します。
これはオルバースの矛盾と呼ばれています。なぜこのような
矛盾が生じるかには深い理由があります。それは、宇宙が
生まれてから現在までは有限の時間(約137億年)しか経っていないので
星を出たどの光もまだ旅の途中であること、そして、その
旅する空間が膨張しているということが原因です。

この世(宇宙)ができた時に発生した光ですらまだ旅の途中なのです。
永遠の時間を考えていたから、無限に広い空間を考えていたから、
不思議な気分がしていたののですが、その不思議な気分はこれで
解消されたでしょうか。


図1 太陽から出た光は 100年ほど旅をするとこの図のあたりまで進んでいます。
(国立天文台 4D2U プロジェクト Mitaka 提供)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shiata/yamashin/52-fig1.jpg

図2  ろ座付近のハッブル望遠鏡による写真。ここに写っている小さな銀河は
数億光年先にあるものです。
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shiata/yamashin/52-fig2.jpg


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捕捉(未掲載)