重力圏はどこに
小惑星リュウグウに到着した探査機「はやぶさ2」は高度851メートルまで降下したり、
上昇したりしながらリュウグウの重力(万有引力)を調べながら探査を地道に重ねています。
8月に入って撮影された最新画像が図1です。
詳しい表面の岩の様子がわかりますね。

私が気になったのは図1の上のリュウグウの上にちょこんと乗っているようにみえる小さな岩Sです。
リュウグウの半径はたった400m程度で、
小さい小惑星ですので重力はそんなに大きいとは思えず、
岩Sは引力でしっかりリュウグウにくっ付いているか心配になってきます。

太陽の様な大きな天体の周りを回る小さい天体があって、
その天体の周りにいる岩などがその天体の重力に十分に引きつけられる距離をヒル半径と呼んでいます。
その半径より内側なら引きつけられるのですが、
その半径より外側なら自由に動き出しその天体のそばにとどまることはありません。

岩Sを見たときにすぐに思い出したのが図2です。
これは土星の輪です。
8月、9月はとても土星がよく見えるので、
お近くの天文台などに行って輪を自分の目で見ることをお勧めします。

輪には細い隙間がいっぱい見えます(黒く見えるリング状の隙間)。
これをよく見るとそこに土星の衛星が見えます。
図2の下では土星の衛星ダフニスが隙間の真ん中にいます。
隙間の幅がまさにヒル半径でこの幅に入っている岩は全てダフニスの引力に吸い寄せられてダフニスに合体し、
結果として隙間ができたのです。

リュウグウのヒル半径は70kmほどですので、図1の岩Sはしっかりとリュウグウに捉えられています。
でも見るからに、ぼろっと取れてどこかに飛んでいきそうですね。


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図1 小惑星リュウグウの8月に撮影された映像(提供JAXA) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/533-fig1.jpg
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図2 探査機カッシーニによる土星の輪(提供 NASA) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/533-fig2.jpg
本文終わり
パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/533-fig.pptx ヒル半径の計算 533.f references will be note-533