ブラックホールはお天気屋
ブラックホールにも、ほがらかで明るく振る舞う時期と固く暗くなる時期とがあって、
二つの状態を行ったり来たりと変化すると聞くとなんだか親しみを感じます。
はくちょう座X-1という一番最初に見つかったブラックホールがあります。
星座の中での場所は図1の左の★のところです。はくちょうの首の真ん中あたりです。
ローサットとよばれるX線望遠鏡でこのあたりを見たときの映像が図1の右で、
X線で明るい星として写っています。
X-1というのははくちょう座で最初に見つかったX線で光る星という意味です。

これがブラックホールからの光(X線)なのですが、その時間変動を調べてみると、
明るい時と暗い時がありそれが不規則に繰り返します。

国際宇宙ステーションに乗っている日本の実験施設にMAXI(マキシー)というX線監視カメラがあります。
それでずっと追跡されているはくちょう座X-1の明るさのグラフが図2です。
2009年8月7日からつい最近の2018年9月20日までの明るさの変化を表しています。
明るくなったり、暗くなったりしていることがわかるでしょう。
2年ほど暗い時期があったり、明るい時でもひと月ほど暗くなったりと、
人間の体調の変化にも似ています。

X線には「柔らかい」と「硬い」があります。
エネルギーの低いX線を多く含む時、X線は柔らかいと呼び、
エネルギーの高いX線を多く含む時、X線は硬いと呼びます。
この表現を使うと、明るい時はX線は柔らかく、暗い時X線は固くなってることが観測されました。
なので、柔らかくて明るい時期と硬くて暗い時期があるという言い方になるのです。

この違いはブラックホールに落ちていく物質の量の変化に応じて、
ブラックホールの周り(吸い込み口の部分)の状態が変化してることとして現在では理解されています。
でもX線が硬くなる原因はよくわかっていません。
また、くわしくみるとこの二つの間に過渡的な微妙に違う状態も存在して結構複雑で現在も研究が続けられています。

周りの状況に応じてゆらゆらいろいろな状態を遷移していくブラックホールの姿は人間の心とも似ているような気がします。




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図1 はくちょう座X-1の位置(左:星図、右:X線の映像) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/537-fig1.jpg
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図2 マキシーによるはくちょう座X-1の明るさの変化 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/537-fig2.jpg
本文終わり
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