ブラックホールを見分ける
X線は病院ではレントゲンとしてお馴染みの強力な光です。
透過力の強さを利用して骨を調べるために使われたり、
最近ではX線CTの検査などもあります。

宇宙からやってくるX線の研究が始まるとすぐに、
はくちょう座方向に二つのX線で光る星が発見されました。
正体は図1のようなもので、まず大きな星があり、天体Xと書かれた場所に非常に小さな星がもう一つあって
互いに周りあっています。連星と呼びます。

そして、大きな星のガスが天体Xに落ち込み吸い込まれています。
落ち込んだガスは、降着円盤と呼ばれる高温の円盤を形成します。
それが1億度もの高温のためX線を放射します。
これがX線望遠鏡で観測されたのでした。
二つのX線星はそれぞれ「はくちょう座X-1」、
「はくちょう座X-2」と呼ばれます。

降着円盤のガスは天体Xの周りを公転していますが、やがて、吸い込まれて、
天体Xの表面に落下し、さらに二倍の2億度まで加熱されます。
「はくちょう座X-2」でX線強度とX線エネルギーの関係(スペクトルと呼びます)を調べると、
赤い色で示した降着円盤からのX線(1億度)と
青い色で示した天体Xの表面からのX線(2億度)の足したものであることがわかりました。
天体Xの正体は中性子星でした。

もし、天体Xがブラックホールだったらどうでしょう。
ブラックホールであれば落下したガスはどんどん吸い込まれますから、
天体の表面から出てくる2億度のX線は見えないはずです。

そしてなんと、
「はくちょう座X-1」の光を分析すると、
図2で青い部分がなく赤い部分だけのグラフが得られました。
「はくちょう座X-1」の天体Xの部分には表面がないのです。
「はくちょう座X-1」のガスを吸い込む天体Xはブラックホールだったのです。

こうして人類はブラックホールを発見したのでした。
1970年代のお話です。
現在ではブラックホールであることが確定した天体がいっぱいあります。


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図1 連星の想像図 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/540-fig1.jpg
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図2 天体Xが中性子星の時のX線のスペクトル http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/540-fig2.jpg
本文終わり
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