今から約五千年も昔、古代の人々が残した文書をみると
「センウセレト3世治世九年何月何日」というような記述がたくさんあります。
王様の在位何年めという年号の記述です。
元号と同じような考えで日付を記録していたのですね。


さて、問題はこのような記述があった時、それが現代の数え方で何年を意味するのかということです。
たとえば、プトレマイオス3世治世九年は紀元前239年プラスマイナス3年ということがわかっていますが、
どうやってわかるのでしょう。
この謎解きに力を発揮するのが天文学です。

季節の変化を捉えるために古代の人たちが重要視した現象にヘリアカル・ライジングというものがあります。
すばるを例にとって説明しましょう。
すばるは図1のように沢山の星が集まった天体です。

現代の私たちですと、
6月15日頃ころ、
明け方太陽が昇る前に東の空の地平線近くにすばるを見つけることができます(図2)。
ところが、5月15日ですと明け方の空のどこを探してもすばるは見つかりません。 
すばるが昇って来る頃にはもう太陽が出ていて見えないからです。

5月25日でも、6月1日になっても、明け方の空にすばるを
見つけることができないでしょう。毎日観察をつづけ、やっと、
6月5日頃に初めてすばるを見つけることができます。
最初の発見が6月5日とすれば、
すばるのヘリアカル・ライジングは今年は6月5日でしたという記録になります。

このように明け方にその年初めてその天体を見つけた日を古代の人々はたくさん記録しています。
図3に日の出のときのスバルの位置を示しましたので参考にしてください。
みなさんもまもなくやってくるすばるのヘリアカル・ライジングを見つけてはどうでしょう。
ヘリアカル・ライジングの記録が年代を決めるヒントになる仕組みを次回説明いたしましょう。






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図1 すばる(プレアデス星団)(提供:NASA,ESA,AURA) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/568-fig1.jpg
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図2 2019年6月15日午前3時(日の出前)の東の空 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/568-fig2.jpg
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図3 明け方薄明のころのすばるの位置の変化 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/568-fig3.jpg
本文終わり
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