宝石箱の中の二重人格星
宝石箱のようなきらめく星の大集団が図1に写っています。
ターザン5 という名前がついています。
地球から5万9千光年彼方にあって、
その大きさは2光年ほどの星の集団です。

私たち太陽系の周りを見ると、
太陽から一番近い恒星までの距離は4光年ほどですから、太陽の周り4光年以内には
ひとつも恒星がないことになります。
太陽の周りの空間は全く寂しい限りです。
それにひきかえターザン5の場合は、
わずか2光年ほどの中に百万個のも星があるので、
まさに宝石箱のように見えたのも無理はありません。

この画像が綺麗なのには少しトリックがあります。
ハッブル宇宙望遠鏡でまず可視光線で写真をとります。
私たちがカメラで星空の写真を取るのと同じ可視光線です。
次に、チャンドラ宇宙望遠鏡はX線を使って写真を撮ります。
そうするとX線で光っている星の写真が撮れます。
それにピンクの色をつけて、先に取った可視光線の写真に重ねます。
すると、可視光線とX線の合成写真が完成します。
それが図1です。

この画像の中に写っている緑の矢印の位置の星はCX-1という名前で呼ばれる話題の二重人格星です。
ターザン5のX線写真で写る星には二種類あります。
一つは、そばにいる太陽のような星からガスを吸い寄せて光る星。
万有引力(重力)によって引きつけられて星に落下したガスが高熱になって光ります。
重力エネルギーで光る星です。
もう一つは、1秒間に数百回も自転していてその自転エネルギーで光る星。
ミリ秒パルサーと呼ばれます。

図1のなかで緑の矢印をつけた星は、2003年頃の画像では重力で光っていたのですが、
2009年から2014年にかけて暗くなり、自転エネルギーで光るようになりました。
そして、2016年頃から再び重力で光るようになったのです。
ジキル氏とハイド氏のように、光る原理が時に応じて変わる二重人格の星だったのです。
しかし、どういく仕組みになっているのでしょう。
現在解明が進んでいるのでその結果を待つことにしましょう。




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図1 球状星団ターザン5 (提供:NASA) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/610-fig1.jpg
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本文終わり
references https://chandra.harvard.edu/photo/2020/terzan5/ Bahramian, A. et al., 2018, ApJ, 864, 28; arXiv:1807.11589