カニパルサーの光パルス-1
やまがた天文台の望遠鏡の覗くところには接眼レンズが通常取り付けてあり、
そこから星を観察します。
まるで宝石のようにきらめく星たちが見えてとても癒されます。
ここで、接眼レンズを取り外して、
そこにMPPCと呼ばれる装置を取り付けます(図1参照)。
するとどんなことになるでしょう。

光は、光子と呼ばれる微粒子の流れです。
MPPCは望遠鏡に入射した光子のひとつひとつ数えることができます。

望遠鏡を図2に示したようにおうし座のカニ星雲に向けましょう。
カニ星雲の中心天体はカニパルサーと呼ばれ、一秒間に約30回のペースで点滅を繰り返しています。
MPPCは、カニパルサーからの光子のひとつぶ一粒の到来を知らせてくれるので、
その光子の到来時刻の記録がとれます。
データを集めると図3のように綺麗なパルスの波形がみえました。
心臓のパルスを心電図でとった波形のようなものです。
山形大学の中森健之さんの研究グループの最新の研究結果です。
土曜日の観望会でおなじみのやまがた天文台ですが、
このような最先端の天文学の研究にも活躍しているのですね。

このパルスの原因を解明したのですが、ここに面白いことがあります。
地震をたくさん調べると小さい地震はしょっちゅう起きていて、
大きい地震ほど頻度が少なくなり、
巨大地震は滅多に起こりません。
よく考えてみると、海岸に打ち寄せる波も似ていると思いませんか。
小さい波が打ち寄せていても、何十回かに一回は巨大な波が来てびっくりしたりします。
ここにはなにか自然の摂理が潜んでいるの違いありません。

カニパルサーの光の点滅にもこのような性質があり、
時々、巨大地震ならぬ巨大パルスがやってきます。
巨大パルスは電波望遠鏡ではよく見えているのですが可視光線でも見られるらしく、
いくつか報告がありますが、より詳しく調べる必要があります。
電波、可視光線、X線などいろいろな光で巨大パルスを調べることで巨大パルスの原因解明に近づけるのでないかと
思われています。
巨大パルスや巨大地震、巨大波の共通性を見つければ人類にとって大切な知恵になることでしょう。





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図1 やまがた天文台の望遠鏡にMPPCを取り付けたところ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/612-fig1.jpg
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図2 おうし座のカニ星雲(緑色の小さい□)を望遠鏡でみると中心にカニパルサー呼ばれる星が見えます。 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/612-fig2.jpg
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図3 カニパルサーの可視光線のパルス波形 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/612-fig3.jpg
本文終わり
パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/612-fig.pptx references will be note-612