牛の前脚(エジプトの星座)
春の本格的なおとづれを高らかに告げるのは、地平線高く昇った北斗七星でしょう(図1)。
これが昇ってくると春だな、と感じます.

北斗七星は星座名ではありませんが、昔から世界のどの地域でも注目され、星座になっています.
しかし、現在ではおおぐま座というおおきな星座の一部になってしまい、
熊のお尻から尾の部分とみなされています.
しかも、熊の尾はこんなに長くはなく、実に奇妙な位置付けです。

星座を最初に作ったとされるシュメール人たちは北斗七星を「荷車」という一つの星座として位置付けていました。
中国でも似た発想で「帝車」といって天帝の乗る車です。

変わったところでは、エジプトでは牛の前脚を意味する「メスケティウ」という名前の星座でした。
紀元前二千年ころのイディとう人物の木棺の蓋に描かれた図柄は図2(右)のようなものです。
この図柄の横にはエジプト文字で北天のメスケティウと書いてあります(図2左)
エジプトでは牡牛の前脚は最上の供物でしたので、非常に重要な星座だったに違いありません。

エジプトの王様の墓の壁画には天の北極の周りの星が描かれたものが多く見られるそうです。
北の空の星々は不滅の星とみなされたことによります。
つまり、多くの星座は東の地平線から出て、西の地平線に沈みますが、
北斗七星など天の北極の近くの星座は永遠に地平線に沈むことはないので永遠不滅のものの象徴だったのです。

図3に示したように、北斗七星は荷車あるいはメスケティウという一つの星座として独立していたのですが、
いつの頃からかおおぐま座という大きな星座に飲み込まれて、星座の地位を追われてしまいました。

北斗七星は綺麗な形だけに、一つの独立した星座でいてくれたらなと思います。
今晩は春の北東の空を見上げてみましょう。北斗七星が牛の前脚に見えてくるかもしれません。
美味しそうなステーキを想像したりして、、、。



画像をクリック(拡大)

図1 4月1日7時30分頃の夜空 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/613-fig1.jpg
画像をクリック(拡大)

図2 古代エジプトの北斗七星 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/613-fig2.jpg
画像をクリック(拡大)

図3 北斗七星の変化 (トリミングしてください) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/613-fig3.jpg
本文終わり
パワポ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/613-fig.pptx references will be note-613