悩みながら進む天文学
オリオン座の一等星ベテルギウスが急激に暗くなったことをこのコーナで紹介しました。
一旦、二等星にまで転落しましたが、1月20日に底をうったあと、
現在は明るさを取り戻し、もとの一等星にもどりそうです。
よかったですね。

ベテルギウスは巨星と分類され、直径が太陽の千倍近くもある大きい星です。
昔の文献によると、
巨星というのはできたばかりの若い星で、
これが縮んで高温の星になり、
そこから冷えがながら太陽くらいの温度になり、
さらに時間が経つと低温で赤い小さい星になる、
と昔は考えていたようです(図1左)。
この理論によると、
太陽の年齢は2000万年程度だと考えられていました。

現在は、太陽の年齢は約46億年であることがわかっていますし、
巨星は生まれたばかりの星ではなくて、年老いた星ですので、
昔の考え方と全く違います。

しかし、昔といってもこれは1920年代のことで、
関東大震災があったり、アインシュタインが日本を訪問したりした大正時代のことです。

この古い理論に疑問を感じていた人の一人が
エディントンという宇宙物理学者です(図2)。
彼は星の質量と明るさに関係があることを理論的に計算し、実際の観測データとも合わせて、
この関係が正しいことを確信しました(図3)。
星の一生の古い理論にこの関係を当てはまると、星が暗くなると質量がどんどん減少していくことになります。
宇宙空間にある星の質量はほとんど変化しないと思われますのでこれはとても変なことです。

変だということはわかるのですが、どうすれば良いのかがわかりません。
この疑問が解決するのは、星の中心で起こっている核融合の理論ができてからです。
これは1930年代であり、第二次世界大戦が始まる直前のことです。

間違った理論を立て、それがおかしいことに気がついて、
理論を修正し、、、という繰り返しの中で科学が発展することがわかりますね。
図1の右に現在の考えを示していますが、紙面が尽きたのでまたの機会に説明したいと思います。




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図1 星の一生の考え方の今と昔 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/614-fig1.jpg
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図2 アーサー・エディントン(1882-1944) (画像はWikipedia) 掲載のクレジットの入れ方は新聞の規定にしたがっていただければ幸いです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%B3#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Arthur_Stanley_Eddington.jpg http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/614-fig2.jpg
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図3 エディントンによる星の質量と明るさの関係(1924年)(赤が理論計算の結果、点が観測データ) 出典:現代天文学史、小暮智一著、京都大学学術出版会 p.216 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/614-fig3.jpg
本文終わり
パワポ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/614-fig.pptx references will be note-614