ブラッドレーと光行差
今日は、 ふと手にした古い本に書いてあったお話です。 こういう話に出会うと、 自然の解明はほんとうに小さな努力の積み重ねで得られるものだと感じます。 図1を見ると、 排水管のようなものが天井からまっすぐに降りてきています。 でもこれは排水管ではなくて望遠鏡でです。 管のようなものの下から覗いて、頭上ににある星を見るものです。 (天頂塔望遠鏡 zenith sector と呼びます。)[この行、削除] これを使ったのは英国の天文学者のブラッドレイです。 りゅう座のガンマ星は英国ではちょうど頭上を通過するので、この星を観察しました。 もし、ブラッドレイが山形にいたらきっと「こと座」のベガ(織姫星)を観察したでしょう。 山形では織姫星がちょうど頭上を通るからです。 りゅう座のガンマ星が頭上を通過する様子を見ていて、 ほんの少し南寄りに通過することと、 ほんの少し北寄りに通過することとが一年周期で繰り返す現象を探すのが目的です。 真の狙いは、 地球が太陽の周りを公転している結果として星の見える方向が微妙にずれることからその星までの距離を測定しようというものでした。 星からの光は地球の大気に入るときに屈折しますので星の見える方向が変化します。 この厄介な大気の屈折を避けるために、 大気の屈折の影響の無い頭上を見るのです。 ブラッドレイは、確かに一年周期の星の微妙な動きを見出しましたが、 予想と違った方向にズレていました。 これは別の新しい現象です。 図2のように、 地球が太陽の周りを公転する運動によって光の来る方向がほんのわずかずれる「光行差」という現象に遭遇したのでした。 このずれはほんのわずかで、 1キロメートル向こうにいる人がピースサインをした時の二本の指の間くらいのずれです。 プラッドレイの観測でわかったことは、 光行差を考慮した上でさらに小さな一年周期のずれを見つけなければ、星までの距離がわからないということでした。 ブラッドレイの観測は、1725年のことです。 測定技術がさらに進歩して、 星までの距離を実際に測定できるようになるのは1838年のことです。
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図1 ブラッドレイの使った望遠鏡(グリニッチ天文台, 写真提供:Linda Hall Library) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/641-fig1.jpg
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図2 光行差 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/641-fig2.jpg
本文終わり
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