流れる天の川

「五月雨をあつめて早し最上川」
は芭蕉の有名な俳句です。
少しもじって、
「星々をあつめて早し天の川」
というのはいかがでしょう。
天の川は川のように見えますが、
天の川を構成している星々はじっとしているように見えます。
しかし、そうではないのです。川のように実際に流れているのです。

星の配置は何千年を経ても不変であり、古代文明の人々も現在と同じ星座をみていました。
しかし、数百万年の時間スケールで考えると星々は移動しています。
精密に星の位置を測定すればそれを検出することが可能です。
図1はガイアと呼ばれる宇宙望遠鏡で捉えた星の運動です。
今後40万年間の移動を曲線で表しています。

ガイアは精密な星の位置を測定することを専門にした宇宙望遠鏡です。
その精度は15等級より明るい星に対しては40マイクロ秒角程度です。
これは、
月の表面で10センチメートル動いてもわかるほどのものです。
約13億個の星の年周視差が測定され、星までの距離や運動速度が測定されています。

ガイアを使えば、
およそ220毎秒キロメートルというすごい速さで
銀河系中心の周りを星々が渦巻いて回っていることがわかります。
さらにそのな流れの中でも微妙な個々の星の運動までもわかります。

そのような天の川の星の流れの一部を図2に紹介します。
小さいたくさんの矢印は一つ一つの星の運動を表しています。
緑の矢印が銀河回転の速度、青の矢印がここで示した星々の平均の速度です。
私の好きなパルサーの速度が赤い矢印で示されていて、こいつは変な速度で運動していますね。
パルサーが誕生時にキック速度を呼ばれる特殊な力を受けて周りとは違う運動をしたことがわかります。

将来宇宙旅行するときは、この天の川の流れに乗って宇宙船は運行するのでしょう。
まるで舟下りのように。









画像をクリック(拡大)

図1 ガイアが捉えた星の動き (Credit: ESA/Gaia/DPAC) (ESA: Europian Space Agency Gaia: Gaia ガイア衛星プロジェクト DPAC: the Gaia Data Processing and Analysis Consortium ) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/665-fig1.jpg
画像をクリック(拡大)

図2 パルサー J2022+5154 の運動と周りの星の流れ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/665-fig2.jpg
本文終わり
パワポ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/665-fig.pptx references will be note-665 Gaia Web page: https://sci.esa.int/web/gaia ガイア衛星 英 語Gaia satellite 説 明 天の川銀河(銀河系)の詳細な三次元地図を作ることを目的としてヨーロッパ宇宙機関が2013年12月に打ち上げたアストロメトリ専用の衛星。ヒッパルコス衛星の後継機である。太陽と地球のラグランジュ点L_2の周りで観測を行う。20等級までの約10億個以上(天の川銀河にある星の約1%)の恒星の位置と固有運動と明るさ(分光測光)、17等級までの1億個以上の恒星の視線速度の測定を目的としている。 2016年9月に最初の約1年間分の観測に基づくデータを公開した(Gaia-DR1)。2018年4月に2回目のデータ公開(Gaia-DR2)が行われ、ヒッパルコス衛星の観測と比べて星の個数、精度とも圧倒的に向上した結果がすでに得られてきている。 具体的には、約13億個の星の年周視差が測定され、その精度は15等級より明るい星に対しては40マイクロ秒角(0.”00004)程度、20等級の暗い星でも700マイクロ秒角(0.7ミリ秒角=0″0007)程度の精度がある。Gaia-DR2の公開直後から様々な分野で多数の論文が書かれている。さらなる精度と信頼度の向上が今後のデータ公開で期待されている。 観測が順調に進み、一部予想以上の性能が発揮されたこともあり、当初2019年末までであった観測予定が延長された。観測終了後、データ解析を経て、2020年代中頃に最終カタログが公開される予定である。見かけの等級が21等より明るい13億個以上の恒星に対して、ヒッパルコス衛星よりも精度が桁違いに向上して、最高精度では10万分の1秒角レベルに達する。 ガイア衛星のホームページ: http://sci.esa.int/gaia/ Gaia-DR2のサイト: https://www.cosmos.esa.int/web/gaia/data-release-2