ニュートリノ加熱による超新星爆発

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私が若い頃に習ったことによると、
大質量の星の最後は、星は燃料を使い果たして中心部が陥没して、
中性子星と呼ばれる硬い芯が残る。
その硬い芯に向かって星を作っていたガスは落下するものの、
硬い芯にぶつかってバウンドして、
一転、外向きの爆風となって飛び散り、それで超新星爆発になる。
実際、バレーボールの上にテニスボールを重ねて落下させ、
バウンドしたバレーボールの上のテニスボールがものすごい勢いで
吹っ飛ぶという実験まであって、そうなんだと納得させられていました。

私が中年になった頃、
コンピュータシミュレーションが発達して、この超新星爆発の計算をしてみると、爆発しないことが分かりました。
バウンドしそうになるのですが、勢いが足りず、結局陥没してしまうのです。
それで、超新星爆発のメカニズムは天文学最大の謎の一つということになってしまいました。

あれは嘘だったのかと思っていましたが、
私が高齢者の仲間入りした頃になって、
ニュートリノという素粒子が星を加熱し、爆発しそうで爆発しないガスを膨張させて、
ちゃんと爆発するという理論が出てきました。
コンピュータシミュレーションでも爆発するのです。

科学はこのように右往左往すすのですが、
実験、あるいは、宇宙の場合、観測して証拠を見つけることで決着します。
決着の第一歩となる研究が佐藤寿紀さんのグループ(理化学研究所・立教大学ほか)により
科学雑誌ネイチャーに発表されました。
図1はチャンドラX線望遠鏡が18日間という長い露出時間をかけて撮った
カシオペヤAという超新星爆発の残骸の写真です。
鉄元素の存在を示すオレンジ色の部分、チタン元素を示す薄水色の部分が重要で、
この辺りがニュートリノによって加熱され膨んだ部分に対応しています。
この観測とコンピュータシミュレーションが一致することから図2のようなニュートリノの加熱が裏付けられた結果となりました。

今後、他の超新星残骸で証拠を積み上げることで本当のことがわかっていくと思われます。
楽しみにですね。





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図1 X線による超新星残骸カシオペヤAの映像(提供:NASA, チャンドラ宇宙望遠鏡) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/670-fig1.jpg
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図2 ニュートリノ加熱の様子(提供:立教大学、https://www.rikkyo.ac.jp/news/2021/04/mknpps000001kzu1.html) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/670-fig2.jpg
本文終わり
パワポ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/670-fig.pptx references will be note-670 Article Published: 21 April 2021 High-entropy ejecta plumes in Cassiopeia A from neutrino-driven convection Toshiki Sato, Keiichi Maeda, Shigehiro Nagataki, Takashi Yoshida, Brian Grefenstette, Brian J. Williams, Hideyuki Umeda, Masaomi Ono & John P. Hughes Nature volume 592, pages537–540(2021)Cite this article