てんびん座

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星座も春から夏へ入れ替わる時期です。
今日午後8時頃の空を見ると(図1)、南に春の星座の代表格のおとめ座が南の空を占領していますが、
東の空ではさそり座がノソノソと這い上がってきています。
その間にあるのがてんびん座です。
星占いではお馴染みのてんびん座ですが、明るい星がありません。
それでも、「く」の字を裏返した形が見つけられればそこがてんびん座です(図1の黄色点線)。
あまり個性のない地味な星座ですね。

実際、てんびん座の地位は危うくて、元々はさそり座の一部だったそうです。
サソリのハサミの部分を切り取っててんびん座にしたんですね。
紀元前1世紀頃になってやっとてんびん座として認められるようになったそうです。
その名残でしょう、
てんびん座アルファ星、ベータ星、ガンマ星(図2参照)は固有名をアラビア語で、
ズベン・エル・ゲヌビ、 ズベン・エス・カマリ、 ズベン・エル・ハクラビ、
といい、その意味は、南の爪、北の爪、カニの爪です。
さらに、てんびん座シグマ星は昔はさそり座ガンマ星だった星です。
そのため現在はさそり座ガンマ星は存在しないことになっています。

てんびん座が独立した理由としては、
紀元前1世紀頃は秋分点がてんびん座付近にあり、太陽がここにある時、昼と夜の時間をちょうど均等に分けていたから
という説があります。
また、お隣のおとめ座は正義の女神アストライアとする考えがあるので、
おとめ座が持つ審判ための天秤と考える人もいます。

しかし、ずっと古い紀元前6世紀頃にできたと思われているムル・アピンという粘土板には
ちゃんとてんびん座が登録され一部おとめ座を含んでいました。
同時にさそり座も登録されています。
そして、おとめ座というのは無くて、そこは畝(うね)ということになっています。

星座も人間が勝手に決めることなので、どこかの国の領土争いのように、取ったり取られたり、産まれたり消えたり、
その歴史は複雑です。
ちょっと悲しくなったので、気分を変えるために
てんびん座アルファ星を双眼鏡があったら見てみましょう。
綺麗な二重星ですよ。





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図1 6月9日午後8時ごろの夜空(Stellariumを用いて作図) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/673-fig1.jpg
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図2 てんびん座は昔はサソリの爪だった http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/673-fig2.jpg
本文終わり
パワポ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/673-fig.pptx