神の手?

---------------------------
宇宙が作り出す造形はほんとうにいろいろなものがあります。
ただ美しいとばかりというものもありますが、面白い形をしていてにニックネームがついたものもあります。
例えば、図1の上は「ギター星雲」ですが、その名の通りギターの形ですね。
図1の下は「神の手」とよばる星雲で、
青く色付けられた部分を見ると確かに手の形が宇宙に浮かんでみえますね。
そしてオレンジ色の部分に手が伸びている。
なぜこんな形が自然にできるのか、と不思議な気持ちになります。

今日は、神の手の右上のオレンジ色の部分の構造について、
ノースカロライナ大学のボルコフスキーさんの研究チームが、
X線天文衛星チャンドラを使って研究したとの報告があったので紹介しましょう。

まず、手の分について先に説明しておきます。
手首のところが特に明るくなっていますが、ここに非常に強い磁場を持って高速に自転する中性子星という星があります。
自転周期は0.15秒です。
大きな天体がこんな速さで自転できませんから、太陽のような大きな星ではないですね。
実際測定すると半径10キロメートルくらいで、星の王子さまの絵に出てきそうな小さな星です。
磁場の強さは説明が難しいのですが、私たちが文具として使っている中で一番巨力な磁石の100億倍くらいです。
強力な発電機になっていて出力されるエネルギーは太陽エネルギーの1万倍くらいになります。
このエネルギーを使って中性子星から、右上と左下の二方向にガスが放出されていて、
それが手のひらと腕の部分を作っています。
ただし、なんで右上が指のような形になるかはわかっていません。

この中性子星が生まれる時、親になる星が超新星爆発をおこしました。
親星が飛び散った破片の一部が右上のオレンジ色に見える部分です。

今回発表になった研究ではこのオレンジ色の爆発の破片の速度が調べられました。
図2のように右上に向かって運動しています。
だだし、色使いが変わって、オレンジ色の部分は明るさによって緑から白に色分けされています。
運動の速さは毎秒5000から1000キロメートルの範囲でした。
爆発のときは毎秒1万キロメートルを超えていましたので、この写真には見えない何かによって減速されたことがわかります。
爆発の破片でなない部分の速度も毎秒4000キロメートルと遅いものでした。
破片の成分はネオンやマグネシウムです。
これらのことから爆発前の星は外側の水素が剥ぎ取られた状態で爆発したことがわかります。
面白いのは、図1で神の手の部分がオレンジ色の部分に触れているように見えますが、
実際に接触している様子はないとのことでいした。
まだまだ、解明が続きますので結果を待ちましょう。



画像をクリック(拡大)

図1 ギター星雲と神の手(提供:NASA) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/678-fig1.jpg
画像をクリック(拡大)

図2 超新星爆発の破片の運動方向(アストロフィジカルジャーナル誌 895巻, 32ページ, より) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/678-fig2.jpg
本文終わり
パワポ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/678-fig.pptx references file:///Users/shibata/Desktop/ss/ref/bibitems/2005.07721.pdf Fast Blast Wave and Ejecta in the Young Core-Collapse Supernova Remnant MSH 15-52/RCW 89 https://arxiv.org/abs/2005.07721 Kazimierz J. Borkowski, Stephen P. Reynolds, William Miltich