小三ツ星

初冬のころポーランドの大地は霧におおわれることが多
いようです。夜になって私は飛行機でポーランドのクラ
コフという町に着陸寸前でした。眼下の景色にはっきり
と道路の街灯が認められるようになった時、その幻想的
な景色にうっとりとしてしまいました。街灯の光が綿の
衣をまとうようににじんで不思議な光を発しているので
した。

暗黒の宇宙に輝く星も普段は、針の先の点のように鋭く
光を放っています。地上ではなくて大気圏外の宇宙ステ
ーションで見た星はなおさらで、まったく光の点にみえ
ることでしょう。しかし、時として星の周りに霧がかか
ったようにガスが漂っている場合があります。すると、
星の光はにじみ、暖かい綿で囲われた電球のようにふん
わりした光を発します。そんな光を見つけてみましょう。

この季節、夜も更けると南の空にオリオン座が出ていま
す。オリオン座は三ツ星とそれを囲う4つの星が非常に
きれいな姿でならんでいます(図1)。これなら見つけら
れるという方も多いと思います。ほぼ横に三つの星がき
れいに並んでいるのを見ることができます。今晩はその
三つ星の下に、今度は縦にならぶ、小さな三つ星を見つ
けてみましょう(図1)。「こみつぼし」と呼んでいる星
の並びです。上から下までは(腕を伸ばして)小指の先ほ
どのへだたりです(約1度)。非常に澄んだ冬の空で「こ
みつぼし」を見つけてみるのが今日の挑戦です。

「こみつぼし」の星たち、特に真ん中の星をじっとみて
いるとそれが輝く点でなくて、ぼんやりと光の衣をまと
っていることに気がつくと思います。もし、地上用のも
ので良いので双眼鏡があれば、それで見るとその様子は
もっとはっきりします。

星のまわりにまとわりつくガスが星の光を反射して光っ
ているのです。これは大きな望遠鏡で見るか、写真に撮
ると星雲だとわかります(図3)。オリオン大星雲とよんで
います。このあたりはガスが多く、今でもたくさんの星
が誕生している地域として有名です。


図1 おりおん座の「こみつぼし」をみつけよう。
(アストロアーツ、ステラーナビゲータを用いて作成)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shiata/yamashin/70-fig1.ppt
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shiata/yamashin/70-fig1.jpg
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図2 「こみつぼし」のなかほどにオリオン大星雲があります。
太陽よりもずっと質量の大きな星が現在もどんどん作られている地域です。
(NASA 提供)

http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shiata/yamashin/70-fig2.jpg
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