遠い星の温度

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「何光年もはるか遠くにある星の温度がなぜわかるんですか」
という質問をいただきました。
確かに温度計を星に持って行くわけにはいきませんね。
太陽は6千度と言われますが、
確かに強い日差しを受けると、その高温を感じますね(図1)。
しかし、夜空の星の温度はどう測定するのでしょう。

発光という現象には、
たとえば、台所のガスの青い炎のように化学反応に関係したものや、
蛍光灯やLEDのように電子の流れ(電流)に関係したものがあります。
それぞれの発光の仕組みは複雑です。
しかし、熱放射といって温度があれば必ず出る光というのがあります。
発光のための特別の仕組みというのはありません。
ただ温度があれば必ず出る光です。

たとえば、オーブントースターの赤い光がそうです(図1)。
どんな物体も1000度くらいになれば赤い光を発します。
星の光はそのような熱放射です。
星の表面のガス燃えているわけでなく、
電気が流れているわけでもありません。

光は電磁波と呼ばれる波です。
その電磁波の波長の違いを私たちは色として見分けることができます。
熱放射では、色々な波長の光がブレンドされています。
そのブレンドのされ方が発光体の温度によって変化します。
図2ではブレンドの様子を3千度の場合、5772度の場合(これは太陽)、1万度の場合について
グラフで表しています。
横軸は波長で、同時に色との関係も示しました。

太陽の光は色々の波長の光がブレンドされていて全体では白っぽく見えます。
低温の星は赤のブレンドが多く、高温の星は青のブレンドが多くなります。
天文学者は分光器を使って、星の光の波長によるブレンドの様子(スペクトル)
を測定し、そこから温度を決定します。

重要なことがあります、図1のような波長のブレンドは、
何光年も宇宙空間を旅をして地球に届くまでにほとんど変化しないということです。
なので、遠くの星の温度がこの方法でわかるのです。

光が伝播する間に少しは光のブレンドが変わってしまうだろうと心配する方もおいでと思います。
確かにそのようなことがありますが、どこをどのくらい進むとどのくらい変化するかも研究されてわかっているので、
その分を補正して正しい温度を求めるようにしています。



図1 太陽の温度のおかげで今年も桜が満開になりました。 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/717-fig1.jpg
図2 星の温度と光の波長ごとの分布。温度の単位はK(ケルビン)で、摂氏温度に 273を足したものです。 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/717-fig2.jpg
本文終わり
図1は適宜トリミングしてください。 パワポ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/717-fig.pptx references will be note-717