グリンピース銀河 (No. 761)

date 2023 02 25
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グリーンピース(青エンドウ豆)というニックネームを持つ小粒の銀河があるそうです。
これをジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡で観測して大発見がありました。

宇宙の画像は大量に撮影されるのですが、
画像の中に面白い天体がないか探すというのは、
画像が多すぎげとても数少ない天文学者の目では足りません。
そこで市民ボランティアでみんなで面白い銀河がないか探すという「ギャラクシーズー(銀河の動物園)」という活動があります。
その中で、緑色の小な丸に見える銀河が複数見つかりました。
それでグリーンピースというニックネームで呼ばれるようになりました。
確かにそれは銀河ですが私たちの銀河系の10分の1ほどの大きさしかありません。
銀河は星の集まりなので、
銀河の光は普通は星の光ですが、
グリーンピースの光は大量のガスによるものでそこから活発に星が誕生しているように見えました。

図1はジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡で撮影された三つのグリーンピースです。
左上の囲みのように、
ギャラクシーズーでは(別の望遠鏡を使っているので)緑に写っています。
ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡では赤外線で、赤く表現されています。
たくさんの銀河が写っている中で、
小さい赤い点として三つのグリーンピース銀河が写っています。
拡大図が緑の丸い囲みの中です。

ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡のいいところは高感度の赤外線分光器を搭載していることです。
これを使えば光の成分を分析して、どのような元素から出てきた光なのかが調べられます。
NASAのローズさんたちが先月発表した論文によると、
図2のように二つのグリーンピース銀河の分光結果では酸素原子の存在がはっきりわかります。
驚くべきことはいちばん遠くにあったグリーンピースは131億光年の距離にあり、
今から131億年まえに既に酸素が宇宙に存在したことがこれでわかる事です。
宇宙が誕生した138億年前には酸素は存在しませんでしたが、徐々に星の中で酸素が合成され、
それが宇宙に拡散していったと考えれています。

グリーンピースに含まれていた酸素量は現在の2%ほどでした。
ゼロから始まって、
徐々に宇宙の中で酸素が増えていく様子がこれでわかってきたことになります。

今、私が吸い込んだ酸素はいつ頃、何処で作られたものでしょう。
その一部は130億年も昔にグリーンピースによって作られたものかもしれないと思うと、
宇宙の長い歴史に支えられて生きているんだなと思います。






図1 ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡によるグリーンピース銀河の映像 (提供: NASA Goddard Space Flight Center/Rhoads et al. 2023) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/761-fig1.jpg
図2 グリーンピース銀河のスペクトル (提供: NASA Goddard Space Flight Center/Rhoads et al. 2023) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/761-fig2.jpg
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パワポ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/761-fig.pptx references file:///Users/shibata/Desktop/ss/ref/bibitems/Rhoads_2023_ApJL_942_L14.pdf Finding Peas in the Early Universe with JWST https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2023ApJ...942L..14R/abstract \bibitem[Rhoads et al.(2023)]{2023ApJ...942L..14R} Rhoads, J.~E., Wold, I.~G.~B., Harish, S., et al.\ 2023, \apjl, 942, L14. doi:10.3847/2041-8213/acaaaf key early universe