赤外線で見た土星 (No. 782)

date 2023 07 22
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図1はおなじみの土星の映像ですが見慣れた写真とちょっと違いますね。
これは、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡による写真です。
6月25日に公開されたものですので、できたてほやほやの写真です。


よく知っている土星の写真にくらべると、土星がどんより暗い。
一方、輪がとても輝いています。
この写真は波長が0.6ミクロンから5ミクロンの間の赤外線で撮影されました(第708回参照)。
土星本体にはメタンが多く含まれており、メタンは太陽の光をよく吸収するので、土星本体は暗く写ります。

一方、輪は、いろいろなサイズの氷と岩の塊が大量に集まってできています。
サイズは砂粒くらいの小さいものから地球の山くらいの大きなものもあります。
これらは太陽の光をたくさん反射するので光って見えているのです。

よくみると、三つの衛星も見えています。これらの衛星は土星の周りを回っています。
ちょっと面白いのはエンケラドスです。
地球は、岩石でできた地殻という卵の殻のようなもがあって、その下に流動性のあるマントルがあります。
卵の比喩で言うと白身の部分は液状ですね。
エンケラドスの場合は、氷でできた殻があって、その下に液体の海があります。
卵の比喩で言うと殻が氷で白身は海水です。

地球に火山があるのと似ていて、エンケラドスでは氷の殻の割れ目から地下の海水が噴き出す、火山のようなものがあります。
火山というより噴水でしょうか。

図2の画像は、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡が捉えたエンケラドス(赤の四角で囲った部分)です。
下に向かって、氷または水ぶきのようなものが広がっているのが捉えられています(青い部分)。
この中に入ったらさぞかし涼しいでしょうね。猛暑日には欲しい氷と水の噴水です。

図2の右肩の写真は土星まで行ったホイヘンスという探査船がとらえた噴水です。
下方にむかって噴水が見えます。
吹き出したしぶきは土星の周りにドーナッツのような輪を形成しています。

土星を今すぐ見たい方は午後10すぎに東の空から登ってきます。
9月になれば日没後、南の空の高い位置になり見やすくなります。お楽しみに。




図1 ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡が捉えた土星 (提供:NASA, ESA, CSA, STScI, Matt Tiscareno (SETI Institute) ほか) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/782-fig1.jpg
図2 エンケラドスから噴き出る氷と水しぶき (提供:NASA, ESA, CSA, Geronimo Villanueva (NASA-GSFC)ほか) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/782-fig2.jpg
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